会頭コメント

会頭コメント

2024年 小林会頭 年頭所感「首都東京と会員企業の繁栄へ~新たな付加価値を創造する企業に期待~」

2024年1月1日
東京商工会議所


明けましておめでとうございます。
2024年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます。

 
時代の転換を図るチャンスの年に

 さて、昨年の経済社会情勢は、内外ともに不透明さと緊迫の度が増した1年でありました。世界ではロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、中台間の緊張、イスラエルとパレスチナ武装勢力間の衝突も深刻化するなど地政学リスクが増大する1年となり、国内ではアフターコロナで緩やかに景気が回復するものの、1ドル=150円前後の歴史的水準に達した円安や41年ぶりの上昇率を記録した消費者物価・エネルギー価格の高騰の影響、深刻さを増す人手不足など、依然として厳しい状況にあります。本年も、先行き不透明な状況が続くことは一定程度覚悟しなければなりません。
 一方、コロナ禍を乗り越え、社会経済活動の正常化が加速したことで、設備投資意欲が顕在化し、約30年ぶりの高い賃上げが実現されるなど、時代の転換が萌芽しています。今こそ、デフレ経済からの完全脱却、成長と分配による経済好循環を実現していく絶好のチャンスにしなくてはなりません。
 政府におかれては、岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の成長戦略を確実かつ速やかに実行に移すことで、生産性向上に裏付けされたモデレートな物価上昇、構造的な賃金上昇を実現し、持続的な成長型経済への転換を果たしていくべきであります。短期的利益に拘泥することなく、中長期の安定的経済発展のための「攻めの経済」、すなわち成長基盤の強化に寄与する政策に国家資源を集中し、官民一体となって、グローバル競争を勝ち抜く足腰の強化を図ることが重要だと考えます。昨年の総合経済対策では、中小企業のチャレンジを支援する方針が明確に示され、エネルギー高騰や物価高対策に加えて、潜在成長率の底上げに資する対策も多く打ち出されました。あとは実行あるのみです。
 
 
「停滞」から「成長」へ

 当然のことながら、われわれ民間も政府に環境整備を求めるだけでなく、「停滞」から「成長」へとマインドを切り替えるとともに、時代の大きな変化を的確に捉え、自己変革に挑戦していかなければなりません。創意工夫に知恵を絞り、絶えざるイノベーションや事業の再生、再構築にまい進し、人や設備への投資を活性化させることが、経済全体としての新たな雇用の拡大、賃金増、さらなる需要増といった好循環を産み出すことにもつながります。また、原材料や光熱費、労務費などの原価を吸収し、適正な利益を確保するためには「取引価格の適正化」が不可欠であります。引き続き、「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上に向け、価格協議・価格転嫁が商習慣として定着するよう、われわれとしても粘り強く取り組んでまいります。
 
 
日本経済をけん引する首都東京と会員企業の繁栄へ

 さて、「人・知・企業・産業・データの集積性と多様性」を有する首都東京は、わが国経済の成長をけん引する重要な役割を担っています。その主体はあくまで企業であり、新たな付加価値を創造する企業への期待はますます大きくなっています。
 私が東商会頭に就任し、1年と2カ月が経過しました。この間、23支部を訪問するとともに、地域の第一線で活動される会員事業者の皆さまと意見交換する機会に恵まれ、多くの示唆をいただきました。この場をお借りして、心から感謝申し上げます。また、昨年10月には4年ぶりとなる経済ミッションを率いてフィリピン・マレーシア・シンガポールを訪問し、民間経済外交を本格的に再開しています。「原点は対話である」が私の信条であり、本年も可能な限り各地域を訪問し、国内外の皆さまとの対話を重ね、活動の軸である「現場主義」「双方向主義」を実践してまいる所存です。
 折しも本年7月には、東京商工会議所初代会頭の渋沢栄一翁が肖像となる新一万円札が発行されます。志高く国の発展に尽くした渋沢翁の精神と理念を今こそ引き継ぎ、本年も「会員企業の繁栄」「首都・東京の発展」「わが国経済社会の発展」を3つのミッションに「東京の発展・変革に挑む」活動にまい進してまいりますので、引き続きのご支援、ご協力をお願いして、私の年頭の挨拶とさせていただきます。

 

東京商工会議所 会頭
小林 健

以上