会頭コメント

会頭コメント

平成14年度与党税制改正大綱について

2001年12月14日
東京商工会議所

1.われわれ商工会議所は、現下の厳しい経済情勢の中、構造改革と同時に抜本的な景気浮揚策を講じていただくようお願いしてきたところである。その観点からすると、思い切った政策減税等を講じていただきたかったが、今回の税制改正は、税収確保を優先せざるをえず、極めて難しい改正であったと思う。そういう中にあって、われわれ商工会議所が要望した中小企業関連事項がそれなりに実現し、関係者のご尽力に感謝申しあげたい。

2.まず、経済界を挙げて断固反対していた法人事業税への外形標準課税導入については、とりあえず見送られたことは評価したい。賃金・資本金等を課税標準とする総務省案が受け入れられなかったものと理解している。
  しかし、大綱には「今後、各方面の意見を聞きながら検討を深め、具体案を得たうえで、景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る」と明記されており、導入の火種が消えたわけではないので、釈然としない思いがある。そもそも、総務省がこれほど景気が悪いときに、しかも経済の実体を全く無視して、このような税制を提案してきたこと自体、全く理解に苦しむものである。今後は、提案の是非を含め、われわれ経済界の意見に十分耳を傾け、とりわけ中小企業の生の声をしっかり聞いていただきたい。
  いずれにしても、地方の財政問題についても、景気の回復と徹底した行財政改革が大前提であり、税の自然増収や行財政改革による経費削減効果を踏まえたうえで、国・地方間の財源配分の見直し、直間比率の見直しやその一環としての地方消費税の拡充等、国・地方を通じた総合的な税体系の抜本的な見直しの中で検討されるべきである。

3.事業承継税制の確立は中小企業の悲願であるが、今回の改正で、取引相場のない株式等に関して、一定の要件のもとで、相続税の課税価格を10%減額する措置が新たに創設されたことは、新たな包括的事業承継税制確立に向けてようやく第一歩を踏み出したことを評価したい。これを契機に、活力ある中小企業の継続・発展により、わが国経済の活性化と構造改革の着実な実現を図るためにも、さらなる拡充が図られることを期待する。また、その実現に向けて、われわれも全力を挙げて取り組んでいきたい。

4.この他、同族会社の留保金課税に関する特別税率の不適用の対象拡大・適用期限延長および中小法人に係る課税留保金額に対する税額軽減措置、中小企業投資促進税制の対象となる取得価額要件の引き下げ・適用期限延長、中小企業技術基盤強化税制の税額控除率の上乗せ措置の適用期限延長、中小企業交際費非課税の緩和措置等が実現したが、中小企業の自己資本充実や投資・研究開発の拡大等に寄与することを期待したい。
5.なお、連結納税制度の導入について高く評価する。税収減を回避するため2%の付加税を導入することになったが、付加税自体は企業のグループ戦略を支援するという制度本来の目的をゆがめるものであり、できることなら避けてもらいたかった。

以上