東商からの重要なお知らせ

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株式会社遠藤商店

“バイヤーから選ばれる極意”は
商品のストーリー

  • 代表取締役 遠藤 剛 氏

株式会社遠藤商店

本社: 〒111-0054 東京都台東区鳥越2-10-9

代表者名: 代表取締役 遠藤 剛 氏

設立: 1951年

資本金: 1,000万円

従業員数: 3名

事業内容: 豚肉加工品の製造・販売、飲食店の運営 販売促進企画立案・制作

URL: https://matsuya-yakibuta.tokyo/endosho-ten/

商品開発・販路開拓のポイント

  • ● 「ローストビーフに負けない価値を」をコンセプトに、製法、素材、パッケージにこだわり、高付加価値商品を開発
  • ● 少なくとも5つ以上のストーリーが語れる商品しかつくらない
  • ● 商品開発や販路開拓の過程で、悩み事や疑問点が出てきたら、まずは専門家に相談
左/焼豚をつくる際に出る端材に着目してシリーズ化した瓶詰め商品。焼瓶、東京X、黒角、白麗の4種類がある。右/東京X焼豚:焼豚史上類を見ないおいしさと贅沢感を目指し誕生した、プレミアムな焼豚。
左/焼豚をつくる際に出る端材に着目してシリーズ化した瓶詰め商品。焼瓶、東京X、黒角、白麗の4種類がある。
右/東京X焼豚:焼豚史上類を見ないおいしさと贅沢感を目指し誕生した、プレミアムな焼豚。
「週1回開店」「50本限定」

──「焼豚専門店」「毎週土曜日のみ・50本限定販売」というユニークな販売手法はどのように生まれたのですか?
遠藤社長
 当社のルーツは、1929年(昭和4年)に祖父が創業した小さな精肉店「松屋」です。ここ台東区鳥越をはじめ蔵前周辺はもともと手工業が盛んな「ものづくりの街」。忙しい職人たちのために商店街の魚屋や肉屋が総菜を提供するようになり、「おかず横丁」が生まれました。祖父の精肉店「松屋」でもコロッケやメンチカツなどを出していて、中でも一番人気だったのが「焼豚」でした。
その後は両親が精肉店を切り盛りしていましたが、父の病気、母の怪我と続き、2010年頃には休業状態になりました。当時、私は、別の業界に身を置いていましたが、3代目として、「松屋」の復活は、ずっと頭の中にありました。そして、試行錯誤の中、2017年4月に自分一人でお店を再開させたのです。
ただ、商売を継ごうにも自分には精肉の知識も経験もない。そこで考えたのが、精肉店から「焼豚専門」への転身です。祖父から父へと受け継がれてきた店舗を守りながら、より進化させた焼豚をおかず横丁から全国の食卓へお届けするという業態への転換を決意したのです。
焼豚づくりには手間と時間がかかります。一人で店舗を運営しながら、全国販売に向けての準備を進める効率的な方法を考え抜いた結果、「開店は週一回、限定50本・売切閉店」というスタイルに行き着きました。食材のムダが出ないうえ、話題性もあり、リピーターが増えると考えたんです。
一方で、商売を引き継ぐにあたって、「ローストビーフに負けない価値を」というコンセプトを掲げました。焼豚を、ラーメンの具材などの脇役ではなく、特別な日のテーブルにメインで並んだり、ギフトとして選ばれるような主役にしたい──その思いから原料や調味料を見直し、パッケージにもこだわりました。それが、「毎週50本限定」というプレミアム感と相まって、お店を再開してすぐにメディアなどで採り上げられるようになったのです。

謹製焼豚
5000円の焼豚に次々とオファー!!

──店頭販売だけでなく、百貨店や通販ギフトなどへの卸売業も展開していますね。
遠藤社長
 この焼豚をもっと多くの人に食べていただきたいけれど、元々が小売店舗の当社には、まとまった数を生産できる体制、自社工場はありません。そこで「松屋」の味を再現してくれる食肉工場に協力してもらい製造しようと考えました。
東京商工会議所に相談し、紹介していただいた工場と連絡を取り、焼豚に対する熱い思いを伝え、共感して製造していただけるところを探してまわりました。そこから、隠れたブランド豚を育てる全国各地の生産者や、品質にこだわる職人気質を持った食肉工場とのご縁が広がっていきました。
その過程で生まれたアイデアが、各地のブランド豚と、同じ地域の隠れた名産品を組み合わせてつくった地域色豊かなオリジナルの焼豚です。
まず、長野県の「きたやつハム」が育てる放牧豚と同じ町で江戸時代から続く麹店がつくる甘酒を使って開発したのが「塩豚」。次いで、静岡県のブランド豚「ふじのくに浜名湖そだち」と伝統的製法でつくられた、同じ静岡県御前崎産鰹節を組み合わせて「鰹豚」を開発しました。
地元東京でも同様に商品を開発しました。それがブランド豚「TOKYO X」に、東京で唯一の工場、近藤醸造(あきる野市)の醤油でつくった醤油だれで味付けした「東京X焼豚」です。
東京X焼豚の価格は1本5,000円程。それでも、商談会に参加すると大手食品商社や百貨店のバイヤーが興味を持ってくれ、取引が次々に広がっていきました。商談まで話が進む確率は約9割です(笑)。

お手軽に家庭で楽しめるように、食べきりサイズのレトルトパック商品もある。
お手軽に家庭で楽しめるように、食べきりサイズのレトルトパック商品もある。
「東京 X 焼豚」のストーリーの例
  • ● おかず横丁の所在地である東京にこだわる
  • ● "幻の豚"と言われる東京都地域特産品、高級銘柄豚「TOKYO X」を使用
  • ● 醤油は近藤醸造株式会社の「キッコーゴ丸大豆醤油」、塩は海の精株式会社「あらしお」と東京の素材に統一
  • ● 東京産「やきしお」に風味豊かな国産有機生姜チップをブレンドした、専用のシーズニングソルトを同封
  • ● 東京五輪の開催予定の年(2020年)に発売したので、パッケージに五輪を連想させる金と銀を使用など
東京X
ためらわずに専門家を頼ろう

──商品開発のアイデアや行動力もさることながら、高い成約率でバイヤーに選ばれる秘訣は何でしょうか?
遠藤社長
 特別に種明かしをしますが(笑)。「ストーリー」が5つ以上語れなければ、商品化しないようにしています。
例えば「東京X焼豚」では「東京のブランド豚」と「東京産の塩と醤油」という東京ならではの素材。「生姜塩」で召し上がっていただくという驚きの食体験。さらに2020年の東京五輪に合わせ、金と銀をパッケージデザインに採用──といったように、いくつものストーリーを盛り込んでいるのです。
その結果、どうなったか? いまでは「東京X焼豚」は百貨店のギフトカタログの巻頭に、見開き2ページで紹介していただいています。
──複数のストーリーを用意したことで、結果として「ローストビーフに負けない焼豚」が実現したのですね。
遠藤社長
 食の分野はジャンルが広いうえ、競合も多く、2つや3つ特徴を打ち出したところで、目の肥えたバイヤーには見つけてもらえません。価格も2本で1万円なので、ローストビーフばかりか鰻などあらゆる高級食材との競争になります。
そういった激しい競争のなかからバイヤーに選んでもらうためには、最低5つは語れるストーリーが必要です。
やみくもに5つのストーリーをつくればいいわけではありません。「ローストビーフに負けない価値を」というコンセプトがあり、それに個々のストーリーがリンクしていることが重要です。
──その他の、現在の取り組みについて教えてください。
遠藤社長
 焼豚をつくる際に出る端材にもう一手間とストーリーを加えたこだわりのごはんのお供をつくっています。価格は一つ1,000円台の瓶詰めで、贈答などにご利用いただいています。
ただ、当社には「ローストビーフに負けない価値を」のほかにもう一つ「焼豚を食卓の真ん中へ」というコンセプトがあります。この2つは考えると矛盾するところがあって、高級感にこだわりすぎると、日常の食卓に並ぶ身近さからは離れていってしまいます。
そこで、最近では湯煎するだけで手軽に食べられる、価格が600円台のレトルトパックの商品も新たにつくりました。
──商談会に積極的に参加し販売先を増やしていますが、商談会などが苦手な人も少なくありません。何かポイントはございますか?
遠藤社長
 確かに、何かを売り込む経験がなかった人にとって、商談会は高いハードルですよね。私も、誰とどうアポを取っていいかもわからない状態からスタートしましたし、はじめて商談会に出るときはエントリーシートの書き方すらちんぷんかんぷんでした。
わからないときは、専門家に聞くのが一番。私も東京商工会議所をはじめ、専門家の方々をつかまえては「教えてください!」とためらわずに相談しました。そうして、一度商談会を経験すれば、一通りの流れが理解でき、気持ちの面でも楽になります。
専門家に助けてもらったといえば、書類の記入。食品業界はえらい大変(笑)。バイヤーさんと「仕事をしましょう」となっても、お客さまごとに記載しなければいけない内容が異なっていて、提出する書類を用意したり、食品検査に出したり、細かい対応はいまでも大変。こういったこともわからなかったらすぐ専門家に連絡して聞いています。
慣れないながらも動いていると、周りがいろんな人を紹介してくれ、仲間が増えていきます。食品検査のことを相談できる食品検査会社の社員、スーパーに強いバイヤーなど、私にも頼れるエキスパートが各方面にいます。わからなことがあれば、どんなことでも全て専門家に相談してみるのが、販路開拓への近道だと思います。

「みんな手間をかけて商品開発をしていると思う。ストーリーづくりでは、その手間を使い古されていない言葉でどのように表現するのかがすごく大事。
								うちの場合、「週50本しかつくれない」という表現がお客さまに響いたわけです。」(遠藤社長)
「みんな手間をかけて商品開発をしていると思う。ストーリーづくりでは、その手間を使い古されていない言葉でどのように表現するのかがすごく大事。うちの場合、「週50本しかつくれない」という表現がお客さまに響いたわけです。」(遠藤社長)
専門家のココに注目!

既存商品をベースにした新商品開発

  • 祖父のレシピをもとに丹念に作られた焼豚には複数のストーリーがある。しかし「焼豚専門店」というバックグラウンドと「ローストビーフに負けない価値を与える」というコアメッセージは変わらない。他社と連携した新しい焼豚ブランド「ご当地コラボ」を展開している。

支援機関を活用した販路開拓

  • 「ご当地コラボ」を生み出した製造工場とのマッチングや、商談会に向けたエントリーシート等の準備は東京商工会議所の支援を活用。わからないことを率直に聞くことで、いつでも相談できる人脈も構築できている。

バイヤー提案時の見せ方の工夫

  • 「商品ごとに最低5つのストーリーが必要」というポリシーを持つ。商品コンセプトをストーリーで伝えることで共感を獲得する手法は、食体験という付加価値をもたらした良例として注目したい。