東商からの重要なお知らせ

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遠忠食品株式会社

生産者との信頼関係が、
おいしい商品づくりの礎

  • 代表取締役 宮島 一晃 氏
  • 製造部部長 宮島 大地 氏

遠忠食品株式会社

本社: 〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1-30-10

代表者名: 代表取締役 宮島 一晃 氏

創業: 1913年

従業員数: 15名

事業内容: 佃煮・惣菜・漬物の製造販売

URL: https://enchu-food.com/

商品開発・販路開拓のポイント

  • ● 生産者と“顔の見える関係”を築き、提供してもらった希少な原材料でおいしい商品をつくる
  • ● 売り場に足を運び、お客さまの声を商品のヒントにする
  • ● 動画コンテンツを販促ツールとして活用
左/東京産ゆず胡椒:東京都内で生産された原料のみでつくったゆず胡椒。中/江戸前一番摘み生のり佃煮:とれたてののりを工場へ直送。製造量に限りがあり数量限定。右/国産味付ザーサイ:国内で栽培加工された希少な国産ザーサイ。
左/東京産ゆず胡椒:東京都内で生産された原料のみでつくったゆず胡椒。
中/江戸前一番摘み生のり佃煮:とれたてののりを工場へ直送。製造量に限りがあり数量限定。
右/国産味付ザーサイ:国内で栽培加工された希少な国産ザーサイ。
地産地消の商品づくりの背景にある「危機感」

──新商品の「横須賀一番摘み生炊きのり佃煮」が大人気だそうですね?
宮島社長
 神奈川県横須賀市の走水にある水産会社の協力のもと、早朝に採れた「一番摘み」ののりを分けてもらい、その日のうちに埼玉県越谷市の工場に直送してのり佃煮に仕上げています。一般的に、のり佃煮には冷凍ののりを使用するのですが、生のりをそのまま炊き上げるので、のり本来のフレッシュな風味が楽しめて、おかげさまで好評です。
こういうことは、大企業にはマネできない。中小企業だからこそできる強みだと思っています。
いま最もヒットしている商品は、小金井市の「JA東京むさし」と提携してつくった「国産味付ザーサイ」。市場に出回っているザーサイはほとんどが中国産ですが、国内で栽培加工された希少な国産ザーサイです。添加物や化学調味料をできるだけ使わずに仕上げたところ、安全な食品を求めるお客さまに支持され、ヒットしました。
──佃煮やお惣菜をはじめ、本当にたくさんの商品を取り扱っていて驚きました。
宮島社長
 100品近い商品のラインナップがあります。自社工場でつくる商品は化学調味料をなるべく使わず、国産の原料を使うようにしています。
他社から購入する商品も化学調味料や保存料、着色料、精製糖を使用していないものを選び、集めています。
商品を増やしている背景にあるのは、消費者の「米離れ」で、一人当たりの年間消費量はピークであった1962年の半分以下に減少しており、そのような状況で佃煮だけを大量につくり続けていても採算が合わないため、惣菜など商品に幅を広げているのです。
──新たに展開するギフトセットも好調のようですが、これも商品の幅を広げる一環ですか?
宮島社長
 それもありますが、日常的に催事販売に私自身が行って、お客さまと会話する中で、「遠忠さんの佃煮や惣菜は日常で買うのは難しいけど、もらったらとても嬉しい」という意見を耳にしたのがギフトセットをつくった一番の理由です。最近では父の日・母の日・敬老の日のプレゼントとしても好評で、販売数量が伸びています。

化学調味料、保存料、着色料等不使用の佃煮ギフトセット
化学調味料、保存料、着色料等不使用の佃煮ギフトセット
「メイドイン東京」の食文化を広めたい

──最近、東京の食材や食文化を広める活動を始めたと聞きましたが?
宮島社長
 東京都内の食品事業者の有志で「メイドイン東京の会」を立ち上げ、東京の農産物の生産者や食品加工メーカーを訪問したり、東京の食材の試食会や食文化に関する勉強会を開催したりしています。メンバー間の交流から、東京で採れた食材を使った商品開発のアイデアが生まれ、練馬区の味噌メーカー「麹屋三郎右衛門」とのコラボで、青梅市で採れたお米や大豆を使った味噌づくりにも取り組んでいます。
この「メイドイン東京の会」のほか、佃煮などの原料である海産物や野菜の生産者を応援する活動にも力を入れています。私たちのような佃煮屋は、元となる原材料がないと何もできません。高齢化や後継者不足による生産者の減少は、深刻な問題で、事実、国内の食料自給率は年々低下しており、東京に至ってはわずか1%というのが現状です。
国産の、とりわけ地元である東京近郊で収穫された素材を使って、おいしい商品をつくり続けるためにも、生産者を大事にしないといけない。できるだけ原材料も現金で購入するようにしています。
──東京近郊の素材を使った「地産地消」の商品開発は、どのように進めるのですか?
宮島社長
 「国産味付ザーサイ」の例でいうと、ある会合でJA東京むさしの方にお会いし、その場で私のほうから「東京産のザーサイをつくってくれませんか」と提案したところからスタートしました。
ポイントは「収穫された分はすべて全量で買い取ります」とその場で条件を提示したこと。なぜなら、その担保があれば、JAの方も管轄の農家に交渉しやすいからです。
ザーサイは栽培が難しいため、10年かけてようやく商品開発に必要な数量を確保できるようになりました。協力してくれたJA東京むさしや農家の方々には心から感謝しています。
──10年もの間、ザーサイづくりに取り組んでもらえたのは社長のお人柄と信頼関係があってこそだと思います。応援するほかに、生産者と信頼関係を築くポイントなどありますか?
宮島社長
 今度はのりのケースでお話しすると、当社は船橋、横須賀と東京湾近郊のほか、東松島や金沢などからものりを仕入れています。遠い場所でもできるだけ現地に足を運んで、水産業者や漁協の方々にお会いし、顔の見える関係を築く。電話やパソコン越しで話しただけの人に、入札で高く売れる一番摘みののりなどわざわざ提供してくれません。
また、当社で購入したのりを佃煮にして、その加工賃をもらって生産者に送り返すこともしています。生産者にとっても、漁業協同組合などと一緒に商品を売って利益を上げることができます。
同じようにJA東京むさしでも、管轄でつくったザーサイは全量購入しますが、逆にすべての店舗で私たちが加工したザーサイを置いてくれています。こういったお互いに持ちつ持たれつの関係を築くことが地産地消の商品づくりでは大事ですし、小さい規模だからこそできることだと考えています。

創業当初から、直径90cmの大釜に直接火を当てて煮込む直火炊き製法にこだわっている。
創業当初から、直径90cmの大釜に直接火を当てて煮込む直火炊き製法にこだわっている。
月1回の「商品会議」で自由なアイデアを奨励する

──動画制作・配信にも力を入れていますが、効果はありますか?
宮島社長
 最初に東京都の「Buy TOKYO 推進活動支援事業補助金」を活用して、自社や商品のプロモーション動画を制作しました。YouTubeチャンネルのほか、自社サイトにもリンクを貼り、展示会の会場でも流しています。動画コンテンツはさまざまな販促ツールとして活用でき、展示会では映像を見ながら商品の説明ができるメリットも大きいですね。
お付き合いのあるさまざまな生産者の方々を、直営店舗に呼んで、YouTubeでトークライブも配信しています。
──息子さん(宮島大地製造部長)も後継者として戻ってきてくれていますね。
宮島社長
 大学卒業後、会社員をしていたのですが、1年ほどで辞め、煎餅屋で1年修業した後に戻ってきてくれました。私のほうからは一切話をしなかったのですが、自分から「やりたい」と言ってくれたのは嬉しかったですね。
──大地さんは製造の責任者をされていますが、商品製造や開発の現場で心がけていることはありますか?
大地部長
 入社した頃は「技術は見て盗め」という職人気質の風土がまだ残っていましたが、若い人には合わなくなっているし、ノウハウがどうしても属人化してしまうと危機感を持ちました。そこで、世代交代しても技術やノウハウ、新商品をつくる力をしっかり引き継がれていくように「フィールドづくり」に取り組んでいます。
具体的には、月に1回、社員全員がそれぞれ試作したものを持ち寄り、みんなで試食して意見を出し合う商品会議を設けています。クオリティよりも、まずは「気軽になんでも持ってこられる」ことが大切。試作に対して私は一切否定しません。社員からは「ザーサイの葉っぱを使った白和え」など十人十色でさまざまなアイデアが出て、製品化もされているのですよ。
──パッケージデザインを一新したのも、大地さんのアイデアと聞きました。
大地部長
 佃煮の国内市場が飽和しつつある中で、日本を訪れる外国人にも目を引くキャッチーなデザインにしたいと思いました。現代のトレンドと「老舗」の雰囲気を融合させ、高級感のあるデザインに仕上がり、その結果、ギフトでの売上も伸び、手ごたえを感じています。
──最後に宮島社長は、これからどんなことに取り組んでみたいですか?
宮島社長
 海外への販路を開拓するための新しい商品に力を入れていきたいなと。
タイをはじめ、アジア圏には米文化の国が多いので、タイ米やジャスミン米に合う佃煮など、商品開発のポテンシャルは大きいと思っています。ベトナムのフォーの上に海苔の佃煮を合わせても面白い。 いつの日か、「TSUKUDANI」が英語の辞書に載るよ うな未来を実現したいですね。

「店舗で扱う商品には、添加物を使わないなどの基準を設けています。例えば、原料で使っている砂糖にしても体にいいものだけ選びます。野菜についても、無農薬や特別栽培の商品が揃ったお店にしてお客さまに安心してもらっています。」(宮島社長)
「店舗で扱う商品には、添加物を使わないなどの基準を設けています。例えば、原料で使っている砂糖にしても体にいいものだけ選びます。野菜についても、無農薬や特別栽培の商品が揃ったお店にしてお客さまに安心してもらっています。」(宮島社長)
専門家のココに注目!

生産者側でも商品を販売するユニークな販売チャネル

  • 栽培が難しく、希少な国産ザーサイを使って商品を作りたいと考えていた当社。取り組んだ戦略は、JA(農業協同組合)と連携しながら生産者との信頼関係を築き、持続可能な供給網を獲得することだった。双方向性を持つ独自の販路開拓として注目したい。

企業連携によるブランディング

  • 都内の食品事業者と「メイドイン東京の会」を立ち上げた。東京で採れた食材を使った地産地消商品開発を通じて、産地の生産者と中長期的な供給網づくりも目指している。美味しい商品と産地を守ろうとする姿勢が同社のブランディングにつながっている。