ニュースリリース

ニュースリリース イメージ画像

企業向け新型コロナウイルス対策情報 第25回 感染症対策と熱中症対策の両立

2020年7月21日
東京商工会議所

東京商工会議所では、新型コロナウイルスが感染拡大する中、企業での対策に活用できる情報として、産業医有志グループ(※)より提供される「企業向け新型コロナウィルス対策情報」を配信(不定期)しております。

本対策情報は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)が作成し、厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けたものです。
詳細は本ページ下部の「文責」をご覧ください。

経営者・総務人事担当者のみなさま、今夏の熱中症対策は万全でしょうか?熱中症は重症化しうるものですが、適切な処置を行うことで予防することができます。熱中症による重篤な災害を防ぐためにも、感染症対策と熱中症対策をバランスよく行って両立しましょう


1.課題の背景

コロナ禍において、感染拡大防止のためにマスクを着用する機会が増えるなど、多くの方がこれまでと異なる生活環境下で夏を過ごしていることかと思われます。特に今夏において注意が必要なポイントとしては、「作業中のマスク着用」と「換気による室温上昇」の二点となるでしょう。暑熱環境下でのマスク着用など、熱中症対策と感染対策のいずれを重視すべきか現場で判断に迷うことも少なくないことが予想されます。


2.企業でできる対策

○屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外す

○やむなくマスクを着用する場合は作業環境や作業方法を工夫する

○屋内では感染リスクと熱中症リスクを勘案し、個別に対策の優先度を判断する

○換気をする場合はエアコンで温度設定をこまめに調整する

厚生労働省が全業種向けに公表した「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」の「6 熱中症の予防」の下記図をもとに補足します。

・職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト 「6 熱中症の予防」(厚生労働省)
 https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/img/covid-19_mailmagazine_no25_01.png

1)屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外す

高温多湿の条件下でマスクを着用すると熱がこもりやすくなり、熱中症のリスクを高めてしまいます。このため、屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外すようにしましょう。対人距離が確保できるよう、以下のような作業方法の工夫も必要です。

□屋外での作業はなるべく1人で行う
□複数名で行う場合は持ち場を分担する

2)屋外で人と2m以上が確保できずマスクを着用する場合は作業環境や作業方法を工夫する

マスクを着用する場合は、熱中症のリスク低減のため、作業環境の改善や作業負荷の低減ができないか検討しましょう。

□パラソルや傘、カーテンなどにより日陰を作る
□扇風機や送風機、ミストファンなどにより冷却する
□暑い時間帯には強い負荷の作業は避ける、作業の負荷を下げる
□暑い時間帯の作業を避ける
□休憩を多めに取る、水分補給を積極的に行うよう啓発する
□マスクを口元シールド(マウスシールド)に代替する

(補足)フェイスシールド使用について
フェイスシールドもタイプによっては、熱がこもって熱中症のリスクや、視界が遮られることによる転倒のリスクにも繋がりえます。
フェイスシールドは眼からの飛沫感染防止には有効ですが、その意味ではマスクと保護メガネで十分な場合が多いです。
オーバーな保護具は他の労働災害のリスクをあげてしまうのでご注意ください。

3)屋内では感染リスクと熱中症リスクを勘案し、個別に対策の優先度を判断する屋内でも、熱源や太陽光、輻射熱などにより40℃近くになり、かつ、対人距離が確保しにくい現場もあります(例:建設現場や製造現場、入浴介助など)。このような場合は、「地域の流行状況」「熱中症のリスク」「マスク以外の代替策」などを考慮しながら、感染対策と熱中症対策の優先度を決めていくことが重要です。

□以下のマトリックスを参考に、個別に対策の優先度を判断する。
□労使協働で、感染リスクと熱中症リスクについて話し合う。

・参考図(感染リスクと熱中症リスクの考え方)
 https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/img/covid-19_mailmagazine_no25_02.png

4)換気をする場合はエアコンで温度設定をこまめに調整する

新型コロナウイルス感染症のリスク要因の一つである「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気と、熱中症予防を両立するため、以下の点に留意してください。

□十分な換気量を確保する ※
□窓を開けて換気することで室温が28℃を超える場合は、エアコンの設定温度を下げる
□室温が高い場合は、窓を開ける時間や窓を開ける回数を減らし、エアコンや扇風機を上手に活用する
 
※1.第10回の「窓の開かないビルにおける換気改善」参照(関連情報リンク6)
※2.1時間に2回程度の数分間全開にすることが推奨されています。
   なお、一般的なエアコンでは換気は行えない点にもご注意ください。


3.熱中症にかかりやすい人について

高齢者、負荷の高い作業、厚着での作業(タイベックや防火服など)、持病のある人、肥満者、体調不良の人などは熱中症をより発症しやすいので、より積極的な管理が必要です。

<関連情報リンク>

1)「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html?fbclid=IwAR0EbHlpTsbf0Y5oew2aijjSzI-0eVmp3Nrh3TDZF_FySHgX4k77vBYwARQ

2)「新型コロナウイルス感染症予防のための夏期における室内環境対策」
 (2020年5月20日:建築衛生分野の研究者からの報告)

https://www.niph.go.jp/soshiki/09seikatsu/arch/COVID19_summer.pdf?fbclid=IwAR22ZigGuiGRWo6UvcEOiItQZjCuvrLZ9fZoQQhFoV2ALnLrd1hBLLhdq6I

3)職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617721.pdf

4)製造業向け 熱中症予防対策のためのリスクアセスメントマニュアル(中央労働災害防止協会)
https://www.jisha.or.jp/research/pdf/201503_02_All_1.pdf?fbclid=IwAR2stGa865-bnCNe8hN8dyZdfQoKZclJB_HVbprC8o17mhRTUCeuZsJ3vaU

5)新型インフルエンザに備えるための食品産業事業者の事業継続計画策定のポイント(農林水産省)

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/pdf/090622point.pdf?fbclid=IwAR2KkMEUUhwkrz58LkAW7UdsalSBNfy9IB83KiG6IZY0lvNFi9YkARVVshk

6)第10回企業向け新型コロナウイルス対策情報配信「窓の開かないビルにおける換気改善」(産業医有志グループ)

http://www.oh-supports.com/img/corona/pdf/010.pdf

関連情報リンク

【文責】五十嵐 侑(東北大学大学院 医学系研究科 産業医学分野 大学院生)

※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。
厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

OHサポート株式会社(代表/産業医 今井 鉄平)では、経営者・総務担当者向けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信しています。本情報は著作権フリーですので、ぜひお知り合いの経営者に拡散をお願いします。

また、動画配信も行っております。リンクは本ページ下部参照。

※本情報配信に関するご意見・ご要望は、こちらまでお寄せください。
 covid-19@ohsupports.com

※これまでに配信しましたバックナンバーは、本ページ下部のリンク参照。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所
ビジネス交流部 会員交流センター