東京商工会議所

人口減少を見据えた
イノベーションで、
下請けからの脱却に成功!!

株式会社剛力建設建設業

代表取締役 山﨑智博
(やまざき ともひろ)氏

剛力建設のイノベーションの特徴

○将来の駐車場余剰を見据えて、機械式駐車場を容易に平面化できるスマートデッキを開発
○寸法を入力するだけで3D設計図面が作成できるシステムを大学と連携して開発

少子高齢化が進み、人口が減少している日本では、大量生産、大量消費のビジネスモデルは行き詰まる。そう考えた山﨑社長が出した答えは、縮小再生産だった。機械式駐車場メーカーの下請け業から平面駐車場メーカーに転身し、成長を続けている。

高まるニーズに、スマートデッキで応える

――機械式駐車場の平面化工事を行っている御社が、もとは機械式の立体駐車場メーカーの下請けとして、建設やメンテナンスを行っていたと伺いましたが?

山﨑社長 都市部の多くのマンションでは、限られた敷地内に駐車場を確保するため機械式の立体駐車場が導入されてきました。しかし、少子高齢化や自動車離れで駐車場の需要が減り、撤去して平面駐車場にしたいという相談が寄せられるようになってきたのです。人口が減少するのは確実ですから、これまでと同じように機械式駐車場の設置工事を行っていたら、わが社の将来はありません。
 そこで、機械式駐車場を撤去したあと、すぐに平置き駐車場に変えられる商品にビジネスチャンスを感じたのです。20数年現場で機械式駐車場に触れてきた経験から、まずエンドユーザーが使いやすいもの、次に現場で作業する人が使いやすいもの、なおかつ工場で加工しやすいもの、という視点で鋼製平面駐車場「スマートデッキ」を開発しました。
 1号機、2号機は外注したのですが意図した形にならず、コストが高い。それなら自分たちで製造可能な設計にしよう、とつくったのがいまのスマートデッキです。

――危機感はあっても、従業員を抱えて新しいことに踏み出せない会社も多いと思いますが?

山﨑社長 0を1にするイノベーションに挑むのは、本当に大変です。そもそも成功確率が非常に低い。失敗しても当たり前という開き直りも必要だと思いますね。その上で、成功するまで愚直に続けるしかありません。
 ですから、新しい事業の目算が立つまで、前の仕事をやめてはダメ。並走して、新規事業の業績が上回ったら前の仕事はやめてもいいし、続ければ事業に厚みがでてきます。リスク分散のためにも片手より両手、両手より3本の矢があったほうがいいですよね。

――ですから、中国に化粧品や日用品を輸出する卸売業もされているのですね?

山﨑社長 自分のなかのどこかに、建設業じゃない事業をやりたいという芽があったのでしょうね。片手に建設業、片手に商業の両利きの経営でいいなと。
 建設業は、今月売上が下がったからといって次月に2倍3倍稼いで取り返すのは難しい。ところが、卸売は谷があっても翌月に2倍、3倍、あるいは5倍の売上をつくることも可能です。利益率では建設業に及びませんが、大体の売上構成比は建設業6割、卸売業4割となっています。


既存の機械式駐車場の解体からスマートデッキ完成まで、小規模であれば5日ほど。(施工前の機械式駐車場)


完成したスマートデッキ

現場の知見×大学の頭脳 =イノベーション

――産学連携でシステム開発を行ったと伺いましたが?

山﨑社長 2019年10月から東京工業大学と研究開発をスタートし、2020年1月に「3D設計図自動生成システム」が完成しました。このシステムを使うことで、これまで建築士に外注して1週間かかっていたスマートデッキの設計図面が、すぐできるようになりました。
 産学連携のきっかけは、東日本大震災で内定を取り消されてしまった中国人留学生を採用してほしいとお願いされたことです。彼が東京工業大学大学院を卒業した人材にパイプがあり、DXを取り入れたいと相談したら、大学の助教授を紹介してくれて、すぐ研究開発が始まったというわけです。日本の中国人コミュニティはとても密で規模も大きく、頭脳レベルもものすごく高い。プログラミングやシステム開発にも長けているので、我々のような中小企業でもタッグを組めばシムテムもつくれます。
 産学連携はものすごく重要だと思っていて、中小企業がなぜいつまでも中小企業なのか、その答えはここにあると感じました。要するに多くの中小企業は研究開発をしていませんから、どこかの真似をしたり、大手の下請けしか選択肢がない。我々のような小さい会社が研究開発に投資するのはすごい負担ですが、化けるかもしれませんよね。
 私も産学連携に取り組むまでは、デジタルは難しく関係のない話だと思っていました。しかし、産学連携を通して、建設業はすごくアナログな業種でデジタルから遠いところにいるからこそ、デジタル化する余地がたくさんあると気づかされました。この気づきが剛力建設が飛躍できるきっかけだったと思います。
 これからは毎年1本テーマを決めて、産学連携を通じて新たなことに取り組みたいと思っています。産学連携での剛力建設の役割は「こういうことはできないでしょうか?」という発想の部分。なぜなら、課題やイノベーションのヒントは現場にしかありません。現場には日々課題があって、それを解決することで社員や社会が楽になる。我々が持つ現場の知見と大学の頭脳を組み合わせれば、社会に貢献できるさまざまなアイデアが実現できるのではないでしょうか。

山﨑社長

さまざまな体験がマインドを変えるきっかけに

――イノベーションを起こして、よかったことは何ですか?

山﨑社長 私自身のマインドが変わりましたね。スマートデッキを製作したことで、自分たちで1から製品をつくれることがわかりました。それが自信になり、ないものは自分たちでつくればいい、という発想に変わったのです。
 社員の心構えも大きく変化しました。下請けとして働いているときは、現場監督と相談して仕事を進めればよいけれど、メーカーという立場になるとマンションのオーナーなど専門家ではないお客さまと直接話をしなければならない。どんな質問が来るかわからないから、非常に鍛えられます。
 さらに、施工後に「ありがとう」とお礼を言われることもある。すると「また頑張ろう」という気持ちが湧いてくる。お客さまからお叱りを受けたり、褒められたりという経験が社員の成長に非常に重要だと思います。

――イノベーションを起こす上で大切なことを教えてください。
山﨑社長 これは私の哲学ですが、無駄を削ぎ落とすことは危険だと思っています。無駄だと思って削ぎ落としたものが、実は無駄じゃないかもしれない。無駄や遊び心からいろいろなものが生まれます。ですから、無駄だと思わずにまずはなんでもやってみる。その経験から学ぶことがたくさんあります。
 中小企業は経営資源が不足していると言われますが、資源がないことを嘆いても何も始まらない。資金、人材、人脈など、あるもので取り組むしかないと思います。
 さらに、成功したからといってそれが最終形ではないし、いまやっている事業もいずれ終わりがくる。常に勉強して、新しいことにトライしていくことが大事ですね。

2020年7月に完成した習志野工場。東京都の「革新的事業展開設備投資支援事業(設備投資の助成金)」を活用し、最新鋭の加工機械を導入。スマートデッキを速やかに加工し、積み替えなどロスなく現場に直送します。

株式会社剛力建設

本社: 〒134-0085 東京都江戸川区南葛西6-13-14

設立: 1995年12月

資本金: 8,000万円

従業員数: 25名

事業内容: 機械式駐車場平面化工事業務全般とそれに関わる各種付帯工事・解体作業

企業HP: https://gouriki-kensetsu.com/

提言内容の解説

Ⅰ-1 未来の社会構造、自社のありたい姿を見据えた「未来志向」の重要性
 環境変化が加速化する中、時代の変化に対応し、イノベーションを創出していくためには、業界を取り巻く動向や、次の10年、20年といった未来の社会構造やニーズを意識し、自社の強みや経営資源が適合可能なマーケットを探索する「未来志向」の考え方が重要である。
 機械式駐車場の下請けメーカーであった剛力建設では、人口減少社会による将来の駐車場ニーズの減少を見据え、「減築」を目指すことを決意。平面駐車場メーカーに転換し、メンテナンスコストがかさむ機械式駐車場を「壊す」ニーズを捉え受注実績を伸ばしている。

Ⅱ-1 イノベーションの実現、成果創出に向け、オープンイノベーションが重要
Ⅱ-2 競争領域に経営資源を投入し、非競争領域では外部との連携を
Ⅱ-3 イノベーション創出に向けてサプライチェーンを超えた連携を図るべき
 経営資源が限られる中小企業・小規模事業者が、既存の取り組みを超えた革新的なイノベーションに取り組み、成果を創出するためには、サプライチェーンを超えた連携、オープンイノベーションに取り組むことが重要である。
 剛力建設では課題・ニーズを現場で捉え、その課題解決に向け大学の知見を活用するといった考えのもと、産学連携に取り組んでいる。具体的には、東京工業大学と連携し、駐車場の幅、長さ、深さなどの寸法を入力するだけで、すぐに3Dの設計図面が完成するシステムを開発。設計の外注費削減、設計業務の短縮化が実現し、他社との差別化、競争力強化につながっている。
 また新規事業として、AIカメラによる可視化管理、キャッシュレス決済システム、ディープラーニングによる画像認識技術を統合した革新的なスマート駐車場システムを開発し、新分野への展開も目指している。

イノベーション創出に向けたポイントをまとめた
『中小企業のイノベーション促進に向けた提言』は こちら