採用氷河期の人材獲得戦略

第1回 企業を取り巻く環境と採用戦略のあり方

2017年6月27日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年12月10日号

成長・充実を目指す企業にとって、必要な人材の確保が経営のボトルネックとなりつつあります。これは単なる好景気での人手不足ではなく、構造的な人材難時代、「採用氷河期」を迎えたことが原因です。企業がそれをどう乗り切っていくか、その方法について解説します。

3×3の変化の波


 今日も人材獲得における企業の悲鳴が聞こえてくる。成長・充実を目指す企業にとって、必要な人材の確保が経営のボトルネックとなりつつある。これは単なる好景気での人手不足ではなく、構造的な人材難時代、「採用氷河期」を迎えたからである。その乗り切り方について述べていきたい。

 日本企業は3×3の大きな変化に直面している=下表。まずは人口動態の変化による影響だ。①総人口の減少:内需の伸びが期待できないので、ビジネスをアジアくらいのサイズで考える必要が出てくる。②生産年齢人口の減少:人材採用競争が激化、特に質の高い人材の獲得が困難になる。③年齢構成の変化(高齢化):若年人材の確保や従来型組織構造の維持がとても難しくなってくる。
 さらに経済社会の変化がある。④環境変化のスピードアップ:事業や商品のサイクルに影響が出て、新事業や新商品開発などへの迅速な対応が求められる。⑤ネットワーク社会化:情報活用の高度化や事業のイノベーションが必要となる。⑥グローバル化の進展:海外展開や組織のダイバーシティ化の推進に取り組まなければならなくなる。
 こうした大きな変化の結果、求める人材が高度化・多様化してくるが、その採用難度はますます上がるだろう。


 

 

2つの戦略的対応の方向性


 大きな変化の影響があるとはいえ、企業が環境変化に対応しなければならないのは世の常であり、必要以上に悲観的になることはない。例年のように大卒学生だけでも50万人もの就職希望者が現れるし、転職希望者に加えてまだまだ活用ができていない採用対象層の存在もある。採用成功のために2つの戦略を提案したい。
1.採用力強化戦略:新卒採用等の現在の採用対象について自社の採用力を高めて、他社との人材採用競争に勝ち抜くこと。
2.採用対象拡大戦略:これまでの対象以外に新たに採用対象を拡大して、多様な人材を対象にダイバーシティ採用を実施すること。
 この2つの戦略を実施することで人材獲得成果をあげることができるだろう。新卒市場では毎年一定の数の学生が社会に出てくる。それを他社と取り合うゼロサムゲーム(定数の奪い合い競争)となっていくので、他社に勝る採用活動を行えばいい。


企業力×採用力=採用成果


 採用の成果とは、企業力と採用力の掛け算の結果になると考えられる。企業力を高めて、応募者に選ばれる企業になっていけば、自然と採用はうまくいくようになる。しかし、それは時間がかかることであるから、現状の採用力をレベルアップすることが最も短期的な成果に結びつきやすい。
 採用対象を広げるためには、自社の求める人材を見直して、現在の対象以外にそのような人材の獲得はできないかと考えることがスタートである。採用しやすい人材層を自社の事業に活用できる可能性はないかという発想も必要だ。どうしても若手がいいなら、フリーターやニートなどの不安定就労層、外国人留学生なども対象となる。即戦力を採るなら経験豊富な主婦層やシニア層なども対象となりうるはずだ。次号以降に具体的手法を述べていく。



執筆者:原 正紀(はら・まさのり)
クオリティ・オブ・ライフ代表、留学生支援ネットワーク理事、高知大学客員教授、成城大学講師。執筆、講演、公的機関委員会委員等実績多数。産学官にて人的課題を解決。

掲載:東商新聞 2016年12月10日号

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