採用氷河期の人材獲得戦略

最終回 採用活動の詰めを確実に、フォローの重要性

2017年7月25日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年2月20日号

成長・充実を目指す企業にとって、必要な人材の確保が経営のボトルネックとなりつつあります。これは単なる好景気での人手不足ではなく、構造的な人材難時代、「採用氷河期」を迎えたことが原因です。企業がそれをどう乗り切っていくか、その方法について解説します。

応募者からの評価を決めるもの


 採用活動の一連のプロセスを行ってきて、ようやく内定を出したがあっさり辞退されてしまった…そんな悔しい思いをされた方は多いだろう。採用競争が激しい現状で、辞退率が高まったという声をよく聞く。採用活動の詰めを誤ってそれまでの努力を水の泡にしないための、フォロー活動とはどのようなものか。

 採用氷河期における活動は、これまで以上にパワーもコストもかかるものとなる。採用活動とは入社人数という形ではっきりと結果が出る世界だ。採用目標を達成するためには、接触した人材を逃さないようなフォロー活動が重要となる。
 応募者からの企業に対する評価を決める際に、ウェブサイトやメディアの出来、面接・面談での対応、会社説明会などイベントの内容などはもちろん重要だが、その合間でのきめ細かいフォロー活動が影響することが多い。
 神は細部に宿るという言葉があるが、ちょっとした気遣いの中に組織らしさがにじみ出ることは多い。エントリーした後の間を置かない挨拶のメール、会社訪問の時の親切な対応やその後のお礼の連絡、面接前後のリラックスさせてくれる気配りなどに加えて、内定者に対するフォローは採用を締めくくる重要な活動である。


内定者フォローの意味


 内定者フォローの目的は、第一義的には辞退の防止にあるが、それ以上の意味を持っている。それは入社後までを見据えた定着・育成への効果である。新卒を採用するということは、組織の中で育てていくこととセットで考えるべきものである。
 もちろん新卒でも即戦力となる人材もいるが、多くはすぐに戦力としては活躍できない。しかし新卒者は、社会人経験がない分特定の色に染まっておらず、求める人材に育てやすい。それが日本企業が新卒採用を重視する、大きなポイントである。
 時間をかけて育てている余裕がない中で、早期育成をするために、内定者のうちから会社や仕事の理解促進、組織風土への適応、社会人としての基礎的な力の養成や、必要とする知識の伝達などを行っておきたい企業は多い。もちろん学生に対して、学生生活を阻害するような関与はできない。本人の了解を前提に可能な範囲で、出来るだけ効率的にフォローしたい。
 加えて内定者には「内定ブルー」とも言うべき、心の揺れ・迷いが起こるものだ。この会社でいいのか、自分が通用するのか、周囲とうまくやっていけるのかなど。それに対して適切なフォローを行うことは、会社にとっても本人にとってもプラスとなる。


採用活動の成功とは


 新卒に関しては採用・定着・育成を一体で考えることが重要で、それこそが新卒一括採用を重視する日本流の人材マネジメントだ。そんなプロセスを経て組織へのロイヤリティが養成され、長く活躍する社員となっていく。終身雇用はもはや幻想に近い世界だが、長期的な雇用を重視する日本企業は多い。早期離職の原因の一つが、入社前とのギャップである「こんなはずじゃなかった」現象だが、それは入社前のフォローが甘いとも言える。早期離職は企業にも個人にもダメージを残すので、しっかりとしたフォローを行って防止したい。
 本連載では「いかに採用するか」というテーマで述べてきたが、もう一つの対策として「いかに採用しないか」という対応がある。優れた実績や人脈を持つ外部のプロ人材を活用し自社の事業を前進させるなど、様々な方法で生産性を高めて、採用しなくても回る組織を作るということだ。それについては私が委員を務めている中小企業庁の人手不足対策研究会で検討中だが、機会があればお伝えしていきたいと思う。



執筆者:原 正紀(はら・まさのり)
クオリティ・オブ・ライフ代表、留学生支援ネットワーク理事、高知大学客員教授、成城大学講師。執筆、講演、公的機関委員会委員等実績多数。産学官にて人的課題を解決。

掲載:東商新聞 2017年2月20日号

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