採用氷河期の人材獲得戦略

第4回 採用すべき人材はどこに、採用対象拡大戦略

2017年7月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年2月10日号

成長・充実を目指す企業にとって、必要な人材の確保が経営のボトルネックとなりつつあります。これは単なる好景気での人手不足ではなく、構造的な人材難時代、「採用氷河期」を迎えたことが原因です。企業がそれをどう乗り切っていくか、その方法について解説します。

採用対象を広げてみる


 人材難社会で効果的な2つの採用戦略としての採用強化戦略に続いて、今回はもう一つの「採用対象拡大戦略」について述べたい。それはダイバーシティ(多様な人材)採用戦略とも呼べる。

  企業が求めるのは、技術開発者、営業販売員、管理スタッフなどの、組織の充実発展に貢献する人材だが、それは若者・男性・日本人である必要があるだろうか。既成概念を超えて考えると、採用対象は一気に拡大する。
 日本ではこれまでダイバーシティとは、女性活用という意味合いで語られてきたが、それはあまりに狭義である。本来はもっと多様な人材層の活用を意味するものであり、主な対象としては女性の他にシニア層、外国人、ニートなどの不安定就労層などが挙げられる。
 さらに障がいを持つ方々やLGBT等性的少数者なども含め、真のバリアフリーを目指すのがダイバーシティの本質だが、日本はまだこれからという段階だ。社会的に必要な取り組みで、大手企業はすでに取り組みつつある。
 単に若手日本人男性の採用が難しいからではなく、それぞれの人材層が持つ強みを組織に活かし、環境変化に柔軟に対応できる、強靭な体制構築がダイバーシティ組織の本領である。


3つの視点で考える多様化


 採用対象の拡大については、3つの観点で考えたい。タテ・ヨコ・ナナメの多様化である。タテの多様化とは年齢軸のこと、特にシニア層の活用を表す。ヨコの多様化とは属性について、性別・国籍など、ナナメの多様化はパーソナリティや価値観についてである。
 シニア人材は、求人倍率的に見て採りやすいだけでなく、経験や人脈などを積み上げている強みがある。時間をかけて育てるべき若手と比べ、手間や時間がかからない戦力と言える。年齢から来る扱いづらさなどはあるが、それは慣れの問題でもある。
 女性の活用については男女雇用機会均等法や女性活躍推進法などの施行により、多くの企業が前向きになってきた。大卒の内定率を見ると、ここ数年は女子学生の方が高いくらいだ。M字カーブと呼ばれる結婚・出産での休職から、いかに復職率を上げていくかが大きなテーマである。
 外国人の活用については、日系人などの在留資格を持つ外国人層、留学生などの高度外国人層、技能実習生層という対象が挙げられる。中でも外国人留学生は若くて意欲もあり、専門性を持ち日本語能力も高い。日本への就職希望者のうち半分程度しか就職できていないので、買い手市場でもある。日本は人口減少により市場が縮小していくので、多くの企業はアジア単位でビジネスを志向する必要がある。


ダイバーシティ人材活用のポイント


 人材の活用については様々なポイントが挙げられるが、私自身多くの事例を見てきて特に中小企業に有効と思うのは、まずは採用してみるというシンプルな決断だ。採用後に、その人材を活用する上で必要な変更を、組織の制度や仕組みに適用していけばよい。
 それにより組織も進化する結果、ダイバーシティやワークライフバランスを実現する組織が出来上がる。企業が生き残る条件は環境変化への対応だが、あらかじめ手を打っておくのは現実には難しい。変化を受け入れ、俊敏に対応することが、中小企業の道である。



執筆者:原 正紀(はら・まさのり)
クオリティ・オブ・ライフ代表、留学生支援ネットワーク理事、高知大学客員教授、成城大学講師。執筆、講演、公的機関委員会委員等実績多数。産学官にて人的課題を解決。

掲載:東商新聞 2017年2月10日号

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