ヒットは必ず生める

最終回 最初の座組みこそが肝心

2017年5月9日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年12月20日号

「ヒットを必ず生める、と信じて動いた企業だけが答えを出せる。」ヒットを生んだ企業がどう動いたかを事例で解説します。(全6回)

 地域からヒット商品を生むために、自治体と民間企業が組むケースは少なくありません。とはいえ、そのすべてがうまくいっているとは言えない状況です。プロジェクトに賭ける官と民の温度差や、責任範囲の曖昧さなどが、そうした事業を中途半端に終わらせる一因になっているのだと推察します。


福祉×広告


 そうした中、先日、実に興味深い官民連携の案件を取材してきました。「琉Q(るきゅー)」と名付けられた、沖縄県のお土産ブランドです=写真。2012年にプロジェクトが発足。パッションフルーツのバターや、アセローラのジャムなど、手作りに徹した約10種のラインナップです。わずか40gの小瓶で600円ほどという高値ながら注目を浴びており、今では注文に対して生産が追いつかない状況と聞いています。
 分かります。確かに美味しいし、食に詳しい人への手土産に好適です。
 この「琉Q」、さらにいくつかの驚きがあります。まず、そのパッケージデザイン。沖縄の土産物といえば、鮮やかな青と赤の配色が多い印象ですが、「琉Q」はいたって地味なベージュのみ。なぜかと尋ねると、「もともと沖縄は『曇りの島』だから」だそう。島の“本当の色”を配することに心を砕いたのだといいます。この発想はとても良いと感じました。ステレオタイプを反映しただけの土産に、人は飽きています。
 最大の驚きは何か。この「琉Q」は官民連携、それも、県の福祉関連団体である沖縄県セルプセンターと、地元の沖縄広告との協業で生まれたというところです。福祉と広告とは、またずいぶんとかけ離れた話ですよね。
 両者は、最初に一つの目標を立てたそうです。それは「福祉施設で作業にいそしむ知的障害の人たちに、より高い作業料を支払える態勢を作りたい」。
 そのためには、これまでの定番ともいえるようなクッキーや石鹸では心もとない。高い価格設定でも買ってもらえるような商品を開発する必要があります。沖縄広告側が提案したのが、前述のようなプレミアム感が十分な商品群でした。商品の中身は地元のプロが生産し、そして、福祉施設でラベル貼りなどを担う、という仕組みです。


プロを認める


 このプロジェクトが成功したのは、まず、その商品自体が強かったからでしょう。と同時に、もう一つの要素も見逃せません。それは、最初の段階で「座組み」をしっかりと行ったこと。
 座組みというのは、次のような3つの約束を交わす作業です。
1.何を達成するかの約束
2.達成するための予算の約束
3.誰が責任を持って進めるかの約束
 官民連携プロジェクトでは得てして、最初になすべきはずの座組みを怠るケースが多い、というのが私の印象です。
 ここが甘くなると、プロジェクトが瓦解する恐れが高まります。
 「琉Q」は官と民の両者で、ここをきちんと踏まえました。福祉施設への説明は官の側であり、商品開発は民の側の仕事。そしてそれぞれがお互いに、相手のプロとしての領域に敬意を持って事に当たりました。だからこそ、うまくいったのでしょう。
 温度差が現れやすい官民が連携するときにこそ、この座組みは重要な作業であると、私は改めて確信しました。

  

  


執筆者:商品ジャーナリスト 北村 森

掲載:東商新聞 2016年12月20日号

以上