覚えずに覚える記憶術

第2回 「アウトプット」で楽に覚える

2017年5月23日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年10月15日号

 第1回では、年をとっても、大学生に負けない記憶力を作ることができる、という話をしました。では、何をすれば記憶力が鍛えられ、入力された情報を記憶に残すことができるのでしょうか。

■人は入力情報の99%を忘れる


 本を読んでも、半年もすれば内容をすっかり忘れてしまう。自分は、「認知症」じゃないかと心配される方がいますが、全く心配ありません。なぜならば、人間の脳は入力された情報の99%を忘れるように作られているからです。
 「いくらなんでも、そんなに忘れないだろう」と思うかもしれません。では、1カ月前の昼ごはん、何を食べたか思い出せますか? ほとんどの人は思い出せないと思います。それが普通なのです。私たちは、日常の些細な出来事のほとんどを忘れます。つまり、「忘れっぽい」のは、正常なのです。
「でも、重要なことは、覚えているじゃないか!」と言われれば、はい、その通りです。脳は「重要じゃないこと」は全て忘れて、「重要なこと」だけを記憶する。これが記憶の基本法則です。
 この仕組みを利用すると、私たちの「記憶」を簡単に強化することができます。つまり、脳に「これは、重要だよ」と教えてあげればいいのです。


■2週間で3回アウトプットする!


 私たちの脳に入力された情報は、脳の「海馬」という部分に仮保存されます。その期間は、2~4週間といいます。その間に、3回以上使われる情報を、脳は"重要"と判断します。そして、何度も使われる情報は、記憶の「仮保管場所」である「海馬」から、「記憶の金庫」とでも言うべき「側頭葉」に移動されます。一度、側頭葉に移動された記憶は、なかなか忘れないし、忘れてもすぐに思い出すことができます。
 「使われない情報」は、全部忘れます。「何度も使われる情報」は、長期に記憶されます。


■記憶はアウトプットで強化される


 「使う」というのは、言い換えると「アウトプット」です。「話す」「書く」「教える」などで、情報を使うのです。例えば本を読んだら、「本の内容を人に話す」「本の感想を書く」などのアウトプットをすることで、圧倒的に記憶が強化されます。
 「記憶する」ことは「インプット」(入力)だと思いがちですが、実は記憶において重要なのは、「インプット」よりも「アウトプット」(出力)なのです。
 とにかく記憶に残したいことがある場合は、2週間に3回以上アウトプットしましょう。


執筆者:精神科医、作家 樺沢紫苑

掲載:東商新聞 2016年10月15日号

以上