小さな会社を強くするマーケティング

第3回 大切なものは足元にある

2017年1月31日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年8月10日号

 あなたは、自分自身について、下記のA,Bのどちらに目が行くことが多いだろうか?

  A. 自分が持っているもの・自分が持っている能力
  B. 自分に足りないもの・自分に足りない能力

 全国の消費者1000人に聞いてみた。結果は、以下のとおりだ。

  A. 30.5% B. 69.5%

 7割の回答者は、「自分に足りないもの・自分に足りない能力」に目が行くと答えている。
 では、もう一つ質問。あなたは、友人について、下記のA,Bのどちらに目が行くことが多いだろうか?

  A. 友人が持っているもの・友人が持っている能力
  B. 友人に足りないもの・友人に足りない能力

 結果は以下のとおりだ。

  A. 81.9% B. 18.1%
 
 圧倒的に多くの人が、「友人が持っているもの・友人が持っている能力」に目が行くと回答している。


隣の芝生は青くみえる


 表は、この2つ質問の回答結果をクロス集計したものである。この表に示すように、突出して多いのが、「自分に不足しているものが気になり、他人が持っているものに目が行く」と回答する人である。まさに、「隣の芝生は青くみえる」ということだ。人は、自分が「持っているもの」ではなく、自分に「足りないもの」に価値を見出してしまう。
 企業も、人の集まりである。同様の発想に陥りがちだ。ライバルを研究して同じことをやろうとしたり、ある企業が成功すると「当社もやらねば」と追随する。競争相手に対抗しようと、次々と商品や機能を「足し算」していく。
 だが、足し算をすればするほど、自社の商品の個性やこだわりが希釈化してしまう。限られた経営資源で足し算をすると、経営はどんどん浅くなる。加えて、競争環境も厳しくなっていく。
 確かに、「豊富な商品構成で、あらゆるニーズに対応します」といって、総合的に事業分野を広げる「足し算企業」は、その多くが不振に陥っているようだ。


  

  

自分の芝生をもっと青くしよう


 人も企業も、自らの「引力」を高めるためには、「隣の芝生は青くみえる」という心理的傾向の逆を行く必要がある。
 つまり、「自分が持っていて、他人が持っていないもの」に着目することだ。表に示した通り、こういった人はもっとも少数派だ。わずか6.4%しかない。
 「ないものねだり」で競争相手の真似をしても勝ち目はない。ライバルに遅れをとりたくなければ、ライバルと違うことをすべきである。自社にあるものでしか、他社との違いを出すことはできない。大切なものは自分の足元にある。
 「隣の芝生」は決して青くない。他社には、あなたの芝生が青く見えているかもしれない。小さくても強い会社になるためには、「自分の芝生をもっと青くすること」に力を集中すべきだろう。



執筆者:岩崎邦彦
静岡県立大学教授・学長補佐・地域経営研究センター長。専攻はマーケティング。著書に「小が大を超えるマーケティングの法則」「引き算する勇気:会社を強くする逆転発想」「小さな会社を強くするブランドづくりの教科書」(いずれも日本経済新聞出版社)などがある。

掲載:東商新聞 2016年8月10日号

以上