企業と従業員を守るメンタルヘルス

第5回 メンタルヘルス対策 社内ルールの策定<その3>

2016年8月30日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年2月10日号

職場のストレス問題が深刻化するなか、労働安全衛生法の一部を改正する法律が成立しました。2015年12月から、従業員50人以上の全ての事業所に対し「ストレスチェック」が義務化されたのに伴い、中小企業ではどのようなメンタルヘルス対策を構築すべきかについて、その実務を解説していきます。(全6回)

(4)休職に入るときのルール


 勤怠が乱れている、職場での言動がおかしい、顧客からのクレームが急増した、など、メンタル不調が疑われる社員に対して、タイミングよく休職命令が出せない企業が多く見受けられる。
 最近では、労働者からの申し出による休職も増加しているが、企業側が、不調者を放置しておくことは様々なリスクにつながるので、業務に支障が出るような不調者を発見した時点で、スムーズに休職命令が出せるような規則(規程)を用意するべきである。休職させる条件として、医師による診断書が必要となるが、診断書を提出させるには、明文化されたルールが必要だ。多くの企業で、それが徹底されず、現場での困惑が広がる中、不調者の病状はどんどん悪化していく。まずは、あらゆるケースを規則(規程)に盛り込み、診断書取り付けから休職命令まで、遅滞なく行えるような工夫がほしい。
 次に、実際の休職の場面における留意点であるが、休職に入るときの面談には、人事・労務担当者、不調者本人の他、不調者の配偶者、上司(明らかに上司との人間関係で不調に陥った場合などは、外れてもらう)、そして産業医が出席すると良い。産業医から、不調者および配偶者に対して、休職中の過ごし方や、復職判断などについてあらかじめ話しておいてもらう。
 そして、会社の規則や細かいことについては、「休職の手引き」を作成して不調者に手渡し、内容を一緒に確認し、最後にサインをもらっておく。ここまでしておけば、復職時のトラブルを最小限に抑えることができる。

 

 

(5)復職するときのルール


 復職には、本人の復職の意思、主治医の意見、産業医の見解、会社の最終決定などが必要であるが、一つ一つの手順が疎かにされているケースが目立つ。まずは、企業側で手順書を明確化し、復職プログラムのモデルケースを作っておく。これがあれば、誰が担当しても、どんな不調者でも、ある程度パッケージ化された復職が可能である。ケースバイケースという名のもとに、まったくルールを策定しないのは、現場の混乱を招く。
 復職の際には、復職判定委員会を開き、合議制で復職を決定するとよい。委員会のメンバーとしては、人事・労務担当者、不調者の上司、産業医・カウンセラーなどの産業保健スタッフが適当である。異動先の候補となる部門のマネジャーなどに参加を求める場合もある。
 精神疾患の場合、いきなりフルタイムでの復職が難しい場合も少なくない。しかしながら、会社はリハビリ施設ではない。一定の配慮の元、通常の業務がこなせる程度まで回復していないならば、復職を認めるべきではない。また、賃金を支払わなければ労働と認められず、労災の適用下にないので、「試し出社」、「リハビリ勤務」などの呼称で出社させる場合は、時給換算などして賃金を支払うべきである。また、これに関しても会社側の勝手な判断でリハビリさせ、万が一通勤途上などで事故があれば(自殺など)、誰が責任を取るのか。そのあたりを、企業は今一度、慎重に考えるべきである。


執筆者:根岸 勢津子
プラネット社長。企業防衛の視点に立ったメンタルヘルス対策の専門家として上場企業70社を含む指導先は100社を超える。

掲載:東商新聞 2016年2月10日号

以上