企業と従業員を守るメンタルヘルス

第3回 メンタルヘルス対策 社内ルールの策定<その1>

2016年8月16日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年11月10日号

職場のストレス問題が深刻化するなか、労働安全衛生法の一部を改正する法律が成立しました。2015年12月から、従業員50人以上の全ての事業所に対し「ストレスチェック」が義務化されたのに伴い、中小企業ではどのようなメンタルヘルス対策を構築すべきかについて、その実務を解説していきます。(全6回)

 前回の解説でふれたとおり、メンタルヘルスケアの全体像は、大きく分けて、ルール作りと従業員への施策の2つから成り立っており、どちらか一方実施したとしても効果はない。また取り組む順番が大切であり、必ずルール作りから行うことを忘れてはならない。理由は、従業員に対して研修その他の意識付けを行ったとしても、そこに会社で決めたルールが含まれていなければ、実際の場面で、どう行動するかを教育できないからである。
 策定するルールは、(1)産業医の運用ルール、(2)健康診断ルール、(3)過重労働者対応ルール、(4)休職するときのルール、(5)復職するときのルールの5つである。正式な規則、規程にするか、運用マニュアルのような形にするのかは、各社の決定による。


(1)産業医の運用ルール


 産業医契約をしている場合、その契約書を今一度点検してみてほしい。産業医が協力的でない、産業医がメンタルヘルスに弱いので困る、という相談をよく受けるが、ほとんどの場合、企業側の体制が整っていないことによるものである。また、産業医が何をする医師で、何をさせるべきではないのか、正しい知識を持ったうえで選任し、活動してもらうようにしたい。産業医の主たる業務は「就労判定」である。高血圧の従業員をこのまま働かせてよいかどうか、うつ病が回復した従業員が、元の職場で働けるかどうか、などに関して意見を述べるのが産業医の職務である。産業医は、決してカウンセリングや治療行為のために企業にいるのではない。まずそこをはっきり認識して、産業医を有効活用したい。
 メンタルヘルス対策においては、企業側で不調者発見時から休職、復職までの流れをルール化し、その中での産業医の役割を明確化しておく必要がある。例えば、不調者の様子を主治医から情報収集する場合、会社が用意した質問用紙を産業医に使ってもらい、主治医に情報提供を求める等の工夫があれば、産業医としても負担が少ない。いきなり「主治医に電話してほしい」と言われても、産業医としても困る。
 また、復職の判断も、すべて産業医任せではなく、企業側の基準や受け入れ態勢を事前に産業医に提示し、そのレベルで復職できるかどうかの助言をもらうようにしたいものである。


 

 



執筆者:根岸 勢津子
プラネット社長。企業防衛の視点に立ったメンタルヘルス対策の専門家として上場企業70社を含む指導先は100社を超える。

掲載:東商新聞 2015年11月10日号

以上