イノベーションを生み出すオフィスづくり

第4回 サロン化するオフィス、創発の場

2016年3月16日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年08月10日号

 ベンチャーや次々に新しいビジネスを生み出している企業のオフィスはいつもにぎやかです。外部から訪れるゲストも多く、経営者と社員が膝をつきあわせて事業と会社の未来について話し合う光景がよく見られます。オフィスの中には常に新鮮な情報とアイデアが飛び交い、社員は職階や専門分野を越えてお互いに刺激し合いながら成果にこだわりを持って働いています。今回は、このように日常的な「創発」をうながすための場づくりについてお話していきましょう。

 イノベーションは非連続で、新たな知の結合から生まれます。ゆえに、一度成功した企業が次なるイノベーションを生み出したいのであれば、既存の殻を破り、あえて混沌とした状況をつくる必要があります。そこで、先進企業が取り入れ始めているのが、オフィスのサロン化です。食や本など人間の本能や好奇心をかき立てるコンテンツと、リラックスして会話が進むクリエイティブなスペース。これらを媒介に社員同士、社員と経営層、社員と顧客の交流が広がり、思いもつかなかったアイデアがひらめきます。イノベーションとは新たな関係性をつくることですから、このような知のプラットフォームは企業経営にとって新たな戦略の一つともいえるでしょう。

渋谷ヒカリエ内にある「Creative Lounge MOV」

渋谷ヒカリエ内にある「Creative Lounge MOV」

 ある独自技術を持つ米国の素材メーカーは、自社ビルの中にイノベーションセンターをつくり外部パートナーとの共創を進めています。同社は多分野に事業展開し拡大を続けるなかで、知識が四散してしまうという悩みと、技術者に応用力が求められるという課題を抱えていました。イノベーションセンターとショールームの大きな違いは、試作や実験を行ないながら共創していくことです。技術者自らが先頭に立つことでアイデアを試しながらスピーディに製品化していくことが可能となりました。

■オフィスは知のプラットフォーム

■オフィスは知のプラットフォーム

 今はオープンイノベーションの時代です。かつてはカリスマ的な経営者や技術者がビジネスを創り、社員はオペレーションに徹してきましたが、成熟社会では社員一人ひとりの創造性が求められます。また、産業自体がサービス化しているため、社員こそが価値創造の源泉といっても過言ではありません。オフィスに創発の場をつくることは社員の知的創造と組織の知的生産をうまく循環させていくために有効です。オフィスらしくない空間をオフィスの中につくる。イノベーションへの第一歩はこんなところにあるかもしれません。次回は最終回となりますが、オフィスづくりへの取り組み方、成功のコツなどをまとめていきます。


執筆者
齋藤 敦子

コクヨ WORKSIGHT LAB. 主幹研究員

掲載:東商新聞 2015年08月10日号

以上