トップアスリートから学ぶ勝者のメンタリティ

第3回 大谷のように仕事の井戸を深く掘り進もう

2016年5月24日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年10月20日号

 9月27日に日本ハムファイターズの大谷翔平は対オリックス戦において、8回まで毎回の12三振を奪って両リーグトップの15勝目を挙げた。大谷ほど仕事の井戸を深く掘り進む選手をプロ野球で探すのは、とても難しい。
 ある時、大谷はこう語っている。

 「タブレットの画面で、いろいろな選手の投げ方や打ち方を見て、『次の練習でこういうことをやってみよう』、『この人のこういうところを真似してみよう』と研究しています。そういう時間がすごく好きですね」
 大谷には、「純粋に野球を究めたい!」という姿勢が備わっている。「何かの見返りを求めてやる」というよりも、本能的に「真理を究めたい」という気持ちがそうさせている。この姿勢が大谷に偉大な仕事をさせていると言える。
 どんな仕事に就くにせよ、仕事に生きがいを見出した人は幸せ者である。反対に、いくら高給取りであっても仕事が生きがいになっていない人は不幸である。大谷にしても、「誰も真似したことのない二刀流を徹底的に究めたい!」という志が、彼に大きな生きがいを与えている。
 生きがいというものは、最低でも10年単位で人生を懸けて着実に成長させていくものでなければならない。あるいは、何時間やり続けても全然疲れない、意識しなくても自然にのめり込んでいける、これこそ生きがいの典型例である。
 例えば、こんなことがあった。2014年のクリスマス。大谷はその日の夜も練習に励んでいた。クリスマスの日くらいは、野球のことを忘れて親しい仲間や彼女を誘って食事会をするのが当たり前なのに、彼はそのことに目もくれず練習にのめり込んでいた。
 そのことについて、後に彼はこう語っている。
 「クリスマスに練習をやっていましたが、その日、『あっ、これっていいかもしれないな』というものがあったんです。もしクリスマスだからって休んでいたら、そのひらめきに出会えなかった」
 このように、大谷の脳裏には四六時中「野球」というテーマが駆け巡っている。最大の懸案事項を頭の中に叩き込んで、その打開策を24時間思索し続ける覚悟があるから、大谷は凄い成果をあげることができる。
 東京の都心を掘り進めば必ず温泉にたどり着くという。しかし、少なくとも1.5キロ以上掘り続けなければ鉱脈には届かない。それと同じように、仕事でも「ああでもない。こうでもない」と四六時中思索を積み重ねることにより、ある時、脳に化学変化が起こって、あなたは宝の山に行き当たる。
 大谷は実現したい具体的な目標を立てて、それを必ず紙に書き出すという。高校3年生の夏の岩手県大会で160キロの球を投げられた理由について彼はこう語っている。
 「ずっと目標にし、それをチームメイトに伝えたり、紙に書いたりしていたからだと思います。そうやって自分にプレッシャーをかけていかないと努力しないので」
 目標や夢を紙に書き出す作業を侮ってはいけない。ただ漠然と目標や夢を頭の中に描くだけでは到底それらを達成することはできない。大谷のように、あなたが一番実現したい目標を書き出し、それを書斎の机の前の壁に貼り付けて毎朝晩声に出して読み上げよう。そして、その目標を親しい友人や家族に宣言をして目標に向かって果敢に行動を起こそう。それこそ大谷のように大きな夢を実現させる大きな要素となる。


執筆者
児玉 光雄

1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学客員教授。京都大学工学部卒。スポーツ心理学者。アスリートのコメント心理分析のエキスパートとして企業を中心に年間70回のペースで講演活動をしている。著書は『Kのロジック 錦織圭と本田圭佑 世界で勝てる人の共通思考』(PHP研究所)をはじめ180冊以上。

掲載:東商新聞 2015年10月20日号

以上