イノベーションを生み出すオフィスづくり

第2回 組織の風通しをよくする動線

2016年3月1日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年07月10日号

 働く人の創造性を引き出すオフィスの工夫について、1つ目のポイントは「動線」です。日々めまぐるしく変わるニーズやマーケットに対して、部門間の垣根を越えてアイデアを出し合っていくためには、動きのあるオフィスにするとよいでしょう。人と情報の流れをどのようにつくるのかは、オフィスづくりにおいてまず始めに考えなければならないことです。優れた経営者はよくオフィス内を歩き回り、部門内外のコミュニケーションの状態や人の動きを把握しています。「動線」は街を構成しているストリートをイメージすると分かりやすいのですが、交差点やたまり場をつくることで、交流や協働が生まれやすくなります。

グループでテーブルを共有するオフィス風景 写真提供:コクヨファニチャー 霞が関オフィス

グループでテーブルを共有するオフィス風景 写真提供:コクヨファニチャー 霞が関オフィス

 一般的なオフィスの動線は安全面と機能面、例えば最短距離でワーカーが移動できるように設計しますが、イノベーションを生み出している企業のオフィスの動線はコミュニケーションを誘発する仕掛けがあります。街のメインストリートのように、動線上にカフェやショップ、ギャラリーを配置するケースもよくあります。ある生活用品の製造販売をしている会社の経営者がオフィス内を見て回ったときに、社員が自席のパソコンに向かったまま会話もなく仕事をしている姿を見て驚いたそうです。現場主義を重視するその会社は、自席に根を生やしていたのではチームワークが発揮できず良いアイデアも生まれないと、グループでテーブルを共有するオフィスに変えました。すると、社員がオフィス内をダイナミックに動き回るようになり、組織の風通しが一気に良くなったそうです。

 図に示した2つのオフィスレイアウトは実際によくある配置パターンです。左は典型的な日本企業のオフィスで縦割りが強く、管理型のマネジメントには向いていますが部門を越えた協働は起こりにくくなります。一方、右はチームを主体とした働き方をしている企業のオフィスで、日常的な擦り合わせやコラボレーションが促進されます。マネジャーが動線の近くに座り、組織全体の知識創造と意思決定を加速させている企業もあります。

 動きながらの能動的なコミュニケーションはポジティブなアイデアが生まれやすいという研究や、歩くことで脳が活性化され、創造性が高まるだけではなく心身の健康にもよい影響を及ぼすという医学的見解もあります。オフィスづくりは家具やビル設備から入りがちですが、人間の身体でいうと新陳代謝を促す血流ともいえる「動線」から考えてみて欲しいと思います。次回は、オフィスの中でも課題が多い「会議」についてお話します。

縦割りが強く、管理型マネジメント向きのオフィスレイアウト

縦割りが強く、管理型マネジメント向きのオフィスレイアウト

コラボレーションが促進されるオフィスレイアウト

コラボレーションが促進されるオフィスレイアウト


執筆者
齋藤 敦子

コクヨ WORKSIGHT LAB. 主幹研究員

掲載:東商新聞 2015年07月10日号

以上