中小企業のM&A

第4回 M&Aの失敗事例

2015年12月22日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年6月10日号

M&Aを進める際の留意点や進め方、手続きなどについて紹介します。(全4回)

 今回は事業承継・M&Aの失敗例と対策について解説します。

①後継者不在による急な会社清算で周りが困惑した事例

事例:オーナー社長が後継者不在のため、いきなり会社を清算すると発表。会社の事業自体は順調であったため取引先、従業員が困惑した例。
問題点:事業承継の際には従業員・取引先・金融機関など多くの利害関係者への配慮が必要。
対策:事業継続が可能な会社であれば、オーナー社長は廃業は最後の手段と考え、清算以外のM&Aなどの事業承継の手段について理解を深める責務があると言える。

②オーナー社長が急逝された事例

事例:生涯現役を目指したオーナー社長が急逝。相続人である社外の親族が困って相談に来所。
問題点:社長の最後の仕事である後継者探しを怠った。
対策:会社と経営者の寿命は異なる。中長期的視野で誰に経営を承継するのか早めに方針を検討することが重要。

③M&A後に譲渡企業の従業員が離散した事例

事例:後継者問題を解決するためM&Aにより譲渡したものの、譲受企業との社風が合わず、さらに勤務地が遠くなる、給与が下がるなど労働条件が悪化したため譲渡企業の従業員の大半が退職してしまった例。
問題点:M&A当事者の理解不足・条件調整不足のままM&Aを実行してしまった。
対策:M&Aの交渉時に相手先の社風をよく理解し、従業員の待遇・条件を維持するよう契約書に盛り込むなどの留意が必要です。

④譲受企業の不用意な発言でM&A交渉が決裂した事例

事例:当初意気投合していたものの、交渉中に譲受企業の不用意な発言により譲渡側が不信感を持ち、交渉が決裂してしまった例。
問題点:譲受企業が譲渡企業に対する真摯な交渉姿勢が欠けていた。
対策:M&Aはモノの「売った」「買った」とは異なり、譲渡側の感情もM&Aの成否を大きく左右する。常に相手側への配慮が必要。

⑤M&A後に譲受前の不法行為が発覚した事例

事例:譲渡企業における長年のソフトウェアの不正利用がM&A後に発覚し、譲受企業が当局から多額の損害賠償を請求された例。
問題点:M&A交渉時の調査不足および最終契約書での取決めがあいまいであった。
対策:可能な範囲で財務・法務デューデリジェンス(買収精査)を実施し、最終契約書にも表明保証条項を明記し、損害補償条項を盛り込むなどリスクを低減させておくことが重要。

⑥過剰なM&A投資により親会社の経営も傾いた事例

事例:印刷会社を譲り受けたものの、業界の急速なデジタル化にともない、譲渡企業のビジネスモデルが陳腐化。銀行借入負担が重く、結局は破産。
問題点:譲受企業が業界の将来性を見誤り、かつ自社の事業規模に不相応なM&Aを行った。
対策:譲受企業によるM&A成約後の事業運営は必ずしも順調に進むとは限らない。万一、M&A後に事業運営が失敗しても親会社が傾かない程度の投資にとどめておいたほうがよい。

 4回にわたり事業承継の現状と選択肢、事例について解説しました。
 全ての会社がいずれは事業承継問題に直面します。自社の現状を把握し、具体的な事業承継策を検討することが経営者の重要な責務と言えます。


執筆者
東京都事業引継ぎ支援センター

掲載:東商新聞 2015年6月10日号

以上