BCP 中小企業の 事業継続マネジメント

第3回  災害発生後の資金繰りを検討しましょう

2015年11月10日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年2月20日号

事業継続力の向上の取り組みについてのポイントを紹介します。(全5回)

 事業継続マネジメント(BCM)に欠かせない検討事項の一つが、災害などによる事業中断後の資金繰りです。残念ながら過去の大規模災害の後、多くの企業が倒産に追い込まれています。今回はそのような現状を踏まえ、災害発生後の資金繰りについて、どのように検討すればよいかをお伝えしていきます。

■まずは大まかに試算してみましょう

 下の試算表を使って、災害が発生した翌月から1カ月ごとの資金繰りを試算してみましょう。必ずしも正確な数字を入れる必要はなく、全体が大まかに把握できる程度の概算で十分です。
 例えば、1月20日に災害が発生したと仮定して、2月の自社の資金繰りがどうなるか記入してみてください。まず売上収入に関しては、今後どのくらい事業中断が続きそうかを想像して、売上の減少幅を考えます(とりあえず仮定の数値でも結構です)。例えば、商品の販売が2週間中断される場合は、平常時の月商の半分とします。ただし、12月の売上金が1月末に入金されるような取引条件であれば、2月初めの時点では平常時と同額の売上金が入っていることになります。
 また、支出の中で固定費部分(人件費、賃借料、その他固定費)は常に同じ金額が入りますが、変動費部分(材料費等、その他変動費)は事業中断の状況によって変わります。工場が止まって材料の調達や業務の外注などが減れば、ここの金額は小さくなります。ただし、売上金と同様、調達時期と支払時期がずれる場合があります。
 このような要領で、実際の入金や支払いのタイミングを考慮して、災害発生の翌月および翌々月に、試算表の各項目がどのくらいの金額になるか検討し、合計を計算してみましょう。なお、2カ月目の合計は1カ月目からの累積となることに注意してください。このように計算した結果、合計金額がマイナスになったとしたら、それが災害発生後に何らかの手段でカバーしなければならない金額ということになります。

一カ月ごとの資金繰り試算

一カ月ごとの資金繰り試算

■災害発生後の資金調達

 事業中断による資金の不足分を手元資金などでカバーできない場合、他にどんな手段が考えられるでしょうか。一般的には損害保険や銀行などからの借り入れが考えられますが、大規模災害発生後には、これらだけでカバーできない可能性が十分あり得ます(特に損害保険は契約条件に注意が必要)。ぜひこうした試算をした上で、日頃取引のある金融機関や保険会社、保険代理店などに相談してみてください。
 また過去の災害では、被災地域の地銀や信用金庫、信用組合、公的機関などによって、被災した個人や企業を対象とした特別な条件の緊急融資が提供されていますので、今後発生する災害でも、同様の融資が提供される可能性があります。これらはウェブサイトなどでも確認できますので、過去に提供された緊急融資の条件などを知っておきましょう。
 別の観点として、手元資金を多めに確保しておくとか、固定費支出の割合を減らすといった、平常時の財務戦略と一体となった取り組み方も考えられます。自社にとって最も現実的な方法を検討してください。
 もともと経営状況に余裕のない企業にとっては、今回のテーマはあまり考えたくない問題かも知れませんが、敢えて厳しい現実を見つめ、どのくらい資金繰りに困るかを試算することによって、漠然とした不安を具体的な課題に変えて、前向きに取り組んでいきましょう。


執筆者
田代 邦幸(たしろ・くにゆき)

自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年にインターリスク総研に入社し、現在に至る。一貫して事業継続マネジメント(BCM)や、災害対策に関するコンサルティングを担当。国際危機管理学会日本支部理事

掲載:東商新聞 2015年2月20日号

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