BCP 中小企業の 事業継続マネジメント

第2回 事業継続の「骨子」について議論しましょう

2015年11月2日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年2月10日号

事業継続力の向上の取り組みについてのポイントを紹介します。(全5回)

 今回は、これから事業継続マネジメント(BCM)に取り組み始める際に、最初に取り組んでいただきたいことをお伝えします。それは、自社としての事業継続の「骨子」を定めることです。つまり「当社はなぜ、何のためにBCMに取り組むのか?」を明らかにし、「災害発生後にどの業務を最優先で再開させるべきなのか?」という方向性を見出すことです。
 ここで、最優先で再開させる業務を決めるのはなぜかというと、災害発生後の状況で、最優先の業務を早期再開させるために、限られた経営資源を集中的に投入する必要があるためです。この段階で「最優先の業務」は必ずしも1つに絞らなくても良いのですが、できるだけ小さい範囲に限定できた方が、BCMにかかる全体的なコストや労力を少なくできます。
 では具体的にはどのように議論を進めていけば良いか、例をあげて説明します。下の図にあるように、まず自社がどのような状況に置かれているか、関係者全員で現状認識を共有し、それを踏まえて自社がBCMに取り組む目的を考えます。次に、その目的を果たすためには災害発生後にどの業務を最優先に再開すべきかを検討します。
 例えば自動車部品メーカーで、自社での部品の生産が止まると、納品先の工場の操業も止まるという関係にある場合、この会社としては「納品先への部品供給を継続する」(自社の責任による納品先の操業停止を防ぐ)という目的でBCMに取り組むことが考えられます。こうして目的が定まれば、この会社の優先順位は必然的に「納品先でのニーズが高い部品の生産を最優先する」となります。このように、自社が置かれている状況から事業継続の優先順位まで、筋の通ったストーリーになっていることが大事です。

優先的に再開させたい業務は?

優先的に再開させたい業務は?

■中小企業だからこそシンプルに議論できる

 このような議論は自社には難しいと感じられた方もおられるかもしれません。そのような方々に知っていただきたいポイントが2つあります。
 1つ目は、最初から完璧な骨子ができなくても良い、ということです。前回お伝えしたように、BCMライフサイクルに沿って継続的に取り組みを重ねていただくのですから、検討のための情報が足りないとか、どう考えてよいか分からない部分があったら、そこは何らかの仮定を置いて進めましょう。後から新たな情報が得られたら、必要に応じて軌道修正すればよいのです。変化の激しい世の中ですから、外部環境の変化によって軌道修正を迫られる事もあるでしょう。「ブレない方針を固める」というよりは、「当面の方向性を定める」くらいの捉え方が現実的です。
 2つ目は、この作業は中小企業に有利だということです。大企業でこのような検討を行う場合、多くの部署の意見を聞いたり、さまざまな情報を集めて分析したりしなければならなくなります。これは「事業影響分析」と呼ばれる作業ですが、さまざまな部門間調整も含めて、企業規模などによっては数ヵ月かかることも珍しくありません。一方、事業内容がシンプルな中小企業であれば、社長を中心に主要なメンバーが集まって議論すれば、ごく短期間で骨子がまとまります。本稿を参考にしていただければ、会社によっては1日で済む可能性も十分にあります。
 ぜひ、各社で事業継続の骨子をしっかり議論していただき、社長自ら社員に語れるようになっていただきたいと思います。


執筆者
田代 邦幸(たしろ・くにゆき)

自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年にインターリスク総研に入社し、現在に至る。一貫して事業継続マネジメント(BCM)や、災害対策に関するコンサルティングを担当。国際危機管理学会日本支部理事

掲載:東商新聞 2015年2月10日号

以上