人事戦略として取り組む障害者雇用

第3回  障害者雇用がもたらす企業の成長とは

2015年10月27日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年4月10日号

障害者雇用に戦略的に取り組む方法を紹介します。(全3回)

■障害特性に合わせた「配慮」はオフィスにおける「気遣い」と同じ

 障害者雇用は採用がゴールではなく、採用後がスタートとなります。障害のある社員が業務に慣れ周囲に溶け込み、長期的に活躍できるようになるには、障害特性に合わせた「配慮」がポイントになります。
 例えば業務指示の仕方です。オフィスでよく見かける「これやっておいて」という指示は、あいまいな表現の理解が苦手な障害者にとって、とても分かりづらいものです。今すぐにやった方がいいのか?終わったらどうしたらいいのか?周囲の状況を把握して自分で考えることは難しいことです。「この資料を30部コピーして3時までに○○さんに届けてください」と具体的に伝えれば、その指示どおりに進められます。
 判断を有する業務は苦手なため、作業手順書やマニュアルを作成し、その通りに進めることをルール化することで、ミスなく仕上げることができます。
 また障害特性上、いろいろな方から仕事の依頼があると、どれを優先して進めればいいのか判断に迷ってしまいます。そのため、業務指示を出す担当社員を決めておき、仕事はその社員の元に集め、優先順位をつけたうえで本人に指示をするようにします。困ったことがあった場合も、その社員に相談するように決めておくと、本人も安心して仕事に打ち込めます。
 障害ゆえに失敗経験が多く、自分に自信を持てない障害者もたくさんいます。ミスをした際などは、「これではダメ」と注意をするのではなく、「こうするともっと良くなる」と前向きに伝えると、本人も自信を失うことなく改善点を受け入れることができます。また、「ありがとう」「助かります」など感謝の気持ちをきちんと伝えることで、自分の仕事が役に立っているという自信になり、それがモチベーションにも繋がっていきます。 
 これらの配慮点をみて「一般の社員に対しても同じことがいえる」と感じた方は多いと思います。障害者に対しての「配慮」はオフィスで励行すべき、社員同士の「気遣い」と同じなのです。

■障害者雇用を進めることは「働きやすい職場づくり」に繋がる

 ちょっとした「配慮」をすれば、きちんと成果を出してくれることを実感できることでしょう。障害特性上の得意分野を任せれば、実にしっかりと活躍してくれます。戦力となっていることを周りの社員が分かり始めたら、「この仕事もできるのではないか」といろいろな業務が集まってきます。そうすると業務の切り出しが一層進み、活躍の場はどんどん広がっていきます。
 障害者雇用を進めていくと「職場の雰囲気がよくなった」という話がよくあります。ノンコア業務が切り出され業務効率が上がり、残業時間が削減されることでワークライフバランスの促進に繋がる。障害のある社員がひたむきに仕事に取り組む姿を見て、自分も頑張ろうというモチベーションアップに繋がる。相手を気遣うことが自然にできるようになり、職場の人間関係が良くなるなど、いろいろな効果が出てきます。
 雇用義務、法令順守がきっかけで始めた障害者雇用が、実は「働きやすい職場づくり」に繋がっていくことに気づかれたことでしょう。障害者が働きやすい職場は、健常者も働きやすい職場なのです。これからの障害者雇用は「義務」ではなく、企業が成長していくための「人事戦略」として取り組むべき、重要なテーマの一つといえるのではないでしょうか。


執筆者
白岩 忠道(しろいわ・ただみち)

パソナハートフル取締役管理統括部長。2003年、パソナグループの特例子会社である同社を立ち上げ、障害特性に合わせた職域開拓を行うかたわら、企業の障害者雇用コンサルティングに従事。10年からは東京都教育庁から委嘱を受け、特別支援学校の就労アドバイザーとしても活動中。

掲載:東商新聞 2015年4月10日号

以上