クレーム客をお得意様客に変える方法

第5回 クレーム対応でやってはいけないこと

2015年10月6日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年12月20日号

クレームへの対応とクレーム客を得意様客に変える方法を紹介します。(全5回)

■「共感」と「同調」は違うと知っておく

 クレーム対応でやってはいけないことをいくつかアドバイスしておきましょう。
 クレームでは「普通はこうでしょ!」「これが常識よ!」と、お客様から言われるパターンがとても多いのですが、このとき、「共感」のつもりで「同調」の言葉をかけてしまうことが少なくありません。
 共感の表現として、「そう思われていらっしゃったわけですね」「お客様がそう思われるお気持ちよくわかります」と、心情に寄り添う言葉を使うのはOKです。ところが、「ごもっともです」とか「お客様のおっしゃるとおりです」といった、共感ではなく、お客様の考えに同調する言葉を返してしまう人が少なくないのです。
 お客様が怒っている場面でこうした同調の言葉を使ってしまうと「分かってくれてありがとう」といった癒しではなく、「やっぱりそうだ。私の言っていることは正しい!」と、逆に怒りの感情をあおってしまうことになります。それがエスカレートすると、お客様の要求も高まり、「謝って済む問題じゃない」「そうだろ、だから金返せ!」ということにもなってしまいます。
 共感は相手への「理解」ですが、同調は相手への「賛成」だと言えます。
 ですから、これまでさんざん同調(=賛成)してきたのに、「金を返せ」となった瞬間に「できません」となると、お客様としては裏切られたような思いにかられてしまいます。そのため、その後の解決策提示が不利になってしまうのです。
 あくまで共感と同調は違うということを知っておきましょう。

■感情的になってはいけない

 お客様と話をしていて、ついつい興奮してキレてしまう対応者が少なくありません。もちろん絶対にあってはならないことです。対応者本人もそのことは十分に分かっているはずなのですが、感情的になってしまうと、理性が吹っ飛んでしまうわけです。
 では、そもそもなぜ感情的になってしまうのでしょう?疑問に思った私は、オペレーターさんが実際に対応した時の録音テープを聴いて調べたことがあります。そこでわかったのは、逆ギレは自分と相手の常識、自分と相手の価値観がそぐわないことから起きているということでした。
 人は往々にして、自分の物差しで物事を解釈してしまうものです。つまり、自分は正しく、常識的だと思い込んでいるのです。ところが、クレーム対応者がそれを「常識ではない」と思っていると、それが逆ギレにつながってしまうのです。
 相手が自分の考えていることと反対のことを言ったり、理解ができないような話をしてくると、「あの人は間違っている」と捉え、敵のように感じてしまうのでしょう。もし、そのような感覚に陥ったときには、お客様との距離感の「間」をとってみてください。「間違っている」というのではなく、「違っている」というふうに考えてみるのです。つまり、そのような考え方もあるのだと思って接するわけです。

 クレーマーというと、面倒な人々のように思いがちですが、とんでもありません。誠意をもってきちんと対応をすれば、必ず納得していただけます。それどころか、他のお客様よりも、簡単に厚い信頼関係を築くことができるのです。
 クレーム対応をしっかりやることによって、ほぼ100%の人がお得意様になってくれます。それだけでなく良いクチコミをひろげてくれ、新しいお客様を増やしてくれることもあります。当然ですが、利益も上がります。クレーム対応をしっかりやることによって、自社のお得意様を増やすことを是非目指してください。


執筆者
谷 厚志(たに・あつし)

クレーム・コンサルタント
企業のお客様相談室で2000本のクレーム対応に接し、「クレーム客をお得意様に変える対話術」を確立。現在は全国でコンサルティングと年間200本の講演活動を行う。著書に「怒るお客様こそ、神様です!」がある。日本クレーム対応協会代表理事。

掲載:東商新聞 2014年12月20日号

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