クレーム客をお得意様客に変える方法

第2回 クレームはお客様からのアドバイス!

2015年9月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年11月10日号

クレームへの対応とクレーム客を得意様客に変える方法を紹介します。(全5回)

■クレームは、処理するものではない!

 私は、クレームに対する考え方が「企業の利益の増減を決める!」と講演でお伝えしています。よくあることですが、企業からクレーム対応のご相談を受ける際、事前にいただく資料の表紙には「クレーム処理表」と記載されています。
 クレームは処理するものなのでしょうか。私はクレームは、処理するのではなく、“対応”するものだと考えています。処理している企業は、目の前のクレームを言うお客を嫌な客と考えてその場限りの対処をし、言うならばお客さまを“ゴミ処理扱い“してしまいます。
 逆にクレームを、「お客さまからのアドバイス」「改善のヒント」と捉えて対応する企業は、お客さまの不満・不便・不快といった「不」の感情を取り除き、多くの笑顔をつくり、お得意様を増やす大きなチャンスと捉えています。

■クレームには必ず背景や事情がある

 日本メンタルヘルス協会の心理カウンセラー、衛藤信之先生に教わったのですが、クレームの中に存在する、人間の怒りの感情というのは、「第二の感情」なのだそうです。最初に怒り以外の「第一の感情」があって、それが徐々に怒りに変わっていくというのです。ですから、クレーム対応では、怒りに変わる前の第一の感情を洗い出すことが重要です。
 では、第一にくるものは何でしょうか。それは、「不平・不満・不安」といった「不」の感情です。商品(サービス)に対する思い入れが強ければ強いほど、期待値が高ければ高いほど、それが叶わなかったときの衝撃は大きく、必然的にハードクレームになってしまいます。
 温泉旅行で、宿泊している部屋で食事ができる「部屋食プラン」の申し込みをしたにもかかわらず、レストランでの食事だったという60代男性からのクレームがありました。
 実は、このご夫妻は2人とも足が悪く、杖を常用されていました。そのため、わざわざ出歩かなくてもいいようにと部屋で食事できるプランにしたのですが、宿の手違いでレストランでの食事になってしまったというのです。
 しかも、バイキング形式だったため、杖をついてトレーを持ち歩くことが困難です。もし行ったとしても、周りの人たちに迷惑をかけてしまうからというので、結局はレストランにはいかず、売店でパンを買って食べたといいます。
 こういった背景=お客様のご事情があるにもかかわらず、それを理解しようとせず対応してしまうと、「ちょっとした手違いなのに、大げさな
…」などといった発想にもなってしまいますし、さらにお客様の怒りの感情をあおるような誤った対応にもつながってしまいます。
 実際にこのケースでも、「部屋で食事を食べたかったそうですが、食べられなかったようです。でも、売店で買ってきたパンでちゃんと食事は
済ませているのですよ。それなのにものすごく怒っています…。この人は、金銭要求のクレーマーだと思います」とオペレーターから報告がありました。
 これは、相手の話をきちんと聞いていない証拠です。聞いてはいるのですが、感情的な言葉だけを聞いて、肝心な背景の中身をまるで聞き出していないのです。
 クレームにはクレームを生んだ背景が必ずあります。開口一番、「どうして予約どおりに部屋でご飯が食べられないのですか!」という訴えには、それぞれの事情と、心情があったのです。まずは、お客様のそうした気持ちに心を向けることが大切です。言葉には出てこない、お客様の期待が裏切られ、がっかりしている気持ちを受け入れる心構えが重要となります。


執筆者
谷 厚志(たに・あつし)

クレーム・コンサルタント
企業のお客様相談室で2000本のクレーム対応に接し、「クレーム客をお得意様に変える対話術」を確立。現在は全国でコンサルティングと年間200本の講演活動を行う。著書に「怒るお客様こそ、神様です!」がある。日本クレーム対応協会代表理事。

掲載:東商新聞 2014年11月10日号

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