信用調査のツボ―プロは企業のココを見る

第5回  変化に気づくためにすべきこと

2015年8月25日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年12月20日号

信用調査の基礎を学び、取引先の見分け方のスキルアップのポイントを紹介します。(全5回)

 これまでに企業の3大経営資源「ヒト」「モノ」「カネ」に分けて危ない会社の見方を説明しましたが、我々プロの調査マンはその変化に最も気をつけています。危ない会社のシグナルとしてよく言われる「会社の整理整頓が出来ていない」「電話の応対がそっけない」「社長の不在が多い」などの現象は、普段からの様子が分かっていないと、なかなか気づくことは出来ません。そのため帝国データバンクでは「現地現認」といって、調査マンが現場に赴くことを実行しています。実際にオフィスに入れてもらい、社長や経理担当者と面談をします。また場合によっては工場や倉庫を見せてもらい、商品が並んでいる店舗の様子も確認します。
 このように、現場の情報を継続的に入手することがとても重要です。これまでの経験から見ても、焦げ付きなどの事例の多くは、「遠隔地取引」や「紹介・仲介取引」などの理由で、社長に会ったことが無い、会社にもしばらく訪問していない、といった状態にあったことが少なくありません。

評点が企業の変化を表す
 とは言え、こういった変化の気づきも人間のすることですから、思い込みがあったり、担当者が変更するなどで、なかなか客観的に判断することは難しいことも確かです。そこで信用調査会社では客観的にこの変化を把握するためのツールとして「評点」を提供しています。
 「評点」は企業の信用程度を示すものとして、銀行、リース会社など多くの金融関連会社はもとより、商社や一般の事業会社に利用されています。この「評点」が上がった、下がったなどの変化が、信用の変化として表れることを取引の判断に利用するわけです。例えば1年前に評点51点の企業が最新のデータでは45点に下がっている。これが変化の一例です。
 帝国データバンクの場合「評点」は大きく2つの要素によって構成されています。1つ目は「定量点」といって、決算書など財務諸表を元にした「客観情報」の数値を用います。さらに
①業歴=(設立後の年数)、
②資本構成=(自己資本比率)、
③規模=(売上高、従業員数)、
④損益=(過去3年の経常損益)、
⑤資金現況=(売上状況・収益・回収状況・支払状況・資金調達力)
の5項目に分けて評価しています。一方、2つ目の「定性点」では、「主観」情報を用いるのが特徴です。主には
①経営者、社長、
②従業員、取引先
を調査マンが判断します。
 これにより、急激に売上が減少した、赤字が続いた、社長が交代したなどといった企業の大きな変化は「評点」の減少といったシグナルとなって気づくことが出来るのです。逆に言えば、「評点」の変化の裏には必ず何かの理由があると言えます。

噂が変化を示すケースも
 ある家庭用品メーカーは今年5月に経営破たんしましたが、評点(※図1)を見ると昨年10月から下がり始め、1月以降は2度も変化しています。無理な販売によって広がった業界内での噂や、会社登記に示された新たな契約内容などによって「評点」が変わり続けたのです。こういった変化を継続的にチェックすることが、取引先が危ない会社となる前に気づくポイントです。少なくとも、売上の上位先や、最近急激に売掛金が増えてきた先に対しては自社の判断のほか、信用調査会社など第3者の評価を合わせて使うことが必要でしょう。


執筆者
藤森 徹(ふじもり とおる)

帝国データバンク 東京支社 情報部部長
企業倒産を専門に扱う「情報部」に22年在籍し、数千社の事例を取材した財務内容のほか、「ヒト、モノ、カネ」を切り口に、外部、内部の両面から企業の将来を分析する。週刊エコノミスト、日経新聞電子版「信用調査マンの目」など執筆。

掲載:東商新聞 2014年12月20日号

以上