信用調査のツボ―プロは企業のココを見る

第4回  カネにまつわる7つのポイント

2015年8月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年12月10日号

信用調査の基礎を学び、取引先の見分け方のスキルアップのポイントを紹介します。(全5回)

企業情報のなかでも「カネ」に関する情報は特に注意が必要です。資金繰りの問題は外部に伝わることが多く、その兆候をキャッチできるかによって、不良債権の発生を未然に防ぐことが可能となるわけです。

 例えば、
①支払手形のサイト(取引代金の締め日から支払日までの猶予期間)が長くなった、もしくはサイトの延長の要請があった、
②支払期日の延長、支払日の変更を要請してきた、
などは資金繰りが悪化しはじめる兆候のひとつです。企業によっては、システムの変更や、グループ間の支払い条件の一本化などを理由とするケースもありますが、売上の減少や、焦げ付きの発生、借入余力の低下なども疑ってかかる必要があります。また、
③請求額どおりに支払わないことが起きている、
④現金払いの比率が低下してきている
場合も同じことが言えます。こういった情報は、営業現場と経理部門との情報共有が大切です。経理部門でキャッチした些細な変化でも、営業現場に伝わると、その後の情報収集活動に役立つでしょう。月末の売掛金、未収金が膨らみ始めたら何か起こっている可能性が高いということです。さて、
⑤手形のジャンプを要請してきた、
⑥支払い担当者が不在がちになっている、
⑦他の債権者がいつも集金に来ている、
といった場合はより一層の注意が必要と考えましょう。
特に手形のジャンプを要請された場合は、現在の売掛金、出荷残、受注残などを調べるほか、原因は何か、他の債権者へも要請があるのか、金融機関の動きなどの情報収集を急がなければなりません。また場合によっては、契約の解除や債権保全にむけた対処も必要です。
 以上の兆候があった場合、やはり相手先企業を訪問するのがセオリーです。例えば、社長が多忙で留守なのは仕方がないとしても、経理担当者が月末に不在であれば何か理由があるはずです。このほかに、銀行マンらしい来客が多いなどといった事も、大切な情報となります。ヒトの動きをもって、カネの動きを知るということです。

数字で見分けるカネのシグナル
 家庭用品メーカーA社は、赤字経営で資金繰りが厳しくなった際に「押し込み販売」を拡大しました。リベート(販売協力費)を支払うことを条件に、受注額以上の商品を納入して一時的に売上高の水増し、現金回収の増加による資金繰りの改善を果たしました。しかしながら、その後の返品に伴う返金とリベートによって採算は更に悪化し、赤字拡大という負のスパイラルに陥りました。こういった、現金の動きは企業の実情を知る上で大きなポイントとなります。
 カネに関する情報は直接営業現場や、入金窓口ではなくとも、財務諸表からも変化を見つけることができます。例えば、「買入債務回転期間(支払手形+買掛金)/月商」、「売上債権回転期間(受取手形+売掛金)/月商」が増加している場合は何れも資金繰りが悪化している可能性があります。危ない会社に時々あるケースでは、売上はそれほど伸びていないのに、「受取手形」や「売掛金」が膨らみ「売上債権回転期間」が増加します。売上が欲しいばかりに信用度、支払い能力の低い企業に対し無理に販売した場合、相手に1年近く払ってもらえないなどといった場合も、ここの数値に異常値が表れます。また、意図的に利益を水増したケースでもこういった変化に注意したいところです。また合わせて、借入金の状態もチェックが必要です。これは「有利子負債月商倍率(有利子負債/月商)」、「借入金平均金利(支払利息/借入金×100)」などで確認します。
 2013年3月に金融円滑化法が終了しましたが、いまだに多くの中小企業が借金の返済に苦労している状況です。残念ながら経営再建が間に合わず、倒産に至ってしまった企業は年商近い大きな借金と、利息の返済が困難となった場合が多いようです。


執筆者
藤森 徹(ふじもり とおる)

帝国データバンク 東京支社 情報部部長
企業倒産を専門に扱う「情報部」に22年在籍し、数千社の事例を取材した財務内容のほか、「ヒト、モノ、カネ」を切り口に、外部、内部の両面から企業の将来を分析する。週刊エコノミスト、日経新聞電子版「信用調査マンの目」など執筆。

掲載:東商新聞 2014年12月10日号

以上