信用調査のツボ―プロは企業のココを見る

第2回  こんな社長は会社をつぶす

2015年8月4日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年11月10日号

信用調査の基礎を学び、取引先の見分け方のスキルアップのポイントを紹介します。(全5回)

企業を見分けるのに必要な二つの目は決算書などの数値を主体とした「定量情報」と、社長の評価、判断を基にした「定性情報」です。そこで第2回は社長の見分け方にスポットをあててみたいと思います。

 まず最近問題となっているのが社長の高齢化や、後継者難です。2013年度の社長の平均年齢は58.9歳ですが、少なくともこの20年間増え続けています。残念なことですが、この1年間だけでも200社を上回る企業が社長の病気、死去が原因で破綻しています。また同族企業の約6割に後継者が居ないといった結果もあります。一般的には事業承継に10年の準備期間が必要とも言われていますので、長期的な見方も必要と言えます。このほか帝国データバンクでは社長の調査項目に「経営者タイプ」として、業界経験年数、経営経験年数、得意分野、就任経緯、人物像の5項目を挙げています。 

数字が苦手な社長は会社をつぶす
 さて、一言に社長を見極めるといっても簡単ではありません。それは判断に必要な「基準」がないことが原因です。とはいえ、倒産企業の取材や、経営状態が芳しくない会社の社長を見ると一定の傾向が見えてきます。帝国データバンクでは社長の人物像を25項目に分類して、当てはまるものにチェックします。項目別に過去の倒産企業データから倒産確率を算出すると、最も高かったのが「係数面不得手」でした。数字に弱い社長が会社をつぶす可能性が高いことを裏付けるデータです。このほか、「人情味に厚い」「積極的」といった、一見良さそうに思える項目も、統計的には倒産の可能性が高い結果となっています。

危機感のない危ない社長
 倒産企業データから会社をつぶす社長の特徴を整理すると、5つの「弱い」と、5つの「ない」の10のポイントにまとめることができます。
①「計数面が弱い社長」は先ほど述べたとおりです。決算書が読めず、赤字の理由がよく分かっていない経営者は、取引する金融機関も警戒します。
②「朝が弱い社長」は朝一番に調査に訪れても社長がいない。出てきた社員にいつ来るか尋ねても「分かりません、来ても昼からです」となります。社長以上に働く従業員には、なかなかお目にかからないところからすると、まず儲からない企業と言えます。
③「決断力が弱い社長」はやめる決断ができません。設備投資を決断することはどんな社長でもできます。ダメとわかれば赤字を出す覚悟で撤退する決断も社長に必要な素質です。
④「パソコンに弱い社長」は、現在のIT社会では周囲に乗り遅れます。
⑤「人情に弱い社長」、これは「リストラができない社長」のことです。確かに人を切ることは、経営者にとって厳しいことです。しかし赤字を解消できない企業はいずれ社員の解雇がまっています。
 さらに5つの「ない」とは、
①「計画性がない社長」、いつまでに、どれだけ、どうやって、の三つが計画立てられていない、いわゆる「ドンブリ勘定」経営のことです。②「情報がない社長」、これは社内、特に「悪い情報」が伝わらずに、足元をすくわれるケースです。幹部社員の引き抜き、不正取引が原因の倒産は、ほとんどの場合、社長が「知らなかった」となるわけです。
③「リーダーシップがない社長」、今や人手不足による企業倒産が増加する局面ですが若手人材を育てるには説得よりも、リーダーとして「聞く力」が必要なようです。
④「危機感がない社長」は自分の会社がつぶれる夢を見たことがありません。儲かっている時に危機感をもてるかどうかです。
⑤「人脈がない社長」、同業者や友人以外に異業種の社長とつながっていることが重要です。

 変化・異常を知るには平常を知る。何よりも普段から会社の顔である社長をよく知ることが重要といえます。


執筆者
藤森 徹(ふじもり とおる)

帝国データバンク 東京支社 情報部部長
企業倒産を専門に扱う「情報部」に22年在籍し、数千社の事例を取材した財務内容のほか、「ヒト、モノ、カネ」を切り口に、外部、内部の両面から企業の将来を分析する。週刊エコノミスト、日経新聞電子版「信用調査マンの目」など執筆。

掲載:東商新聞 2014年11月10日号

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