再考 インフレ論

第5回 企業間の需給を端的に示す需要段階別物価指数

2015年6月2日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年12月10日号

物価上昇とは何を意味するのか、景気や企業経営、為替、金利等の経済要因とどのように関係するのか、さらにはインフレは経済にとって歓迎すべきものなのか等々、物価を多面的に紹介します。(全6回)

 前回までは、主に消費者にとり最も関心が深い消費者物価指数を取り上げてきました。しかし、本紙の読者である多くの企業の方々は個人としてだけではなく、企業経営に携わる立場から経済にコミットしておられるはずです。そうした立ち位置からすれば、最も川下に位置する消費者物価指数だけではなく、そこに至るまでの物価の連鎖関係についても知っておられた方がいいですね。

今回は、企業間取引における物価について考えてみます。

 消費者物価が決まるいわば前段階での物価が企業物価です。ひと昔前には卸売物価と呼ばれていました。つまり、企業間で取引されている各種原材料や中間部品、仕掛品などの取引価格のことです。これら企業間取引での取引価格を対象に算出されたものが企業物価指数です。
 一般には消費者物価指数に先行して企業物価指数が動くことが知られています。消費者物価指数(月次・全国ベース)は総務庁統計局により翌月下旬に集計、発表されるのに対し、企業物価指数(国内、輸出、輸入の3種類あり)は日銀が集計、月次データは翌月中旬に発表されます。このうち国内企業物価指数の総合値が報じられるにとどまることが多いのですが、実はこの統計中には需要段階別のデータがあるのです。これは、企業間取引市場における需給バランスを知るうえではとても示唆に富んだデータです。
 企業間での需要段階に応じて燃料・原材料などの「素原材料」、部品などの「中間品」、そして最終段階での財である「最終財」の3種類のデータが作成されています。需要段階とはつまり流通段階のこと。すなわち「素原材料」⇒「中間品」⇒「最終財」という順に価格変動が波及していくのです。

 当該事業者にとっての利益は、各取引段階で購入価格の変動をどの程度販売価格に転嫁できるかで決まります。インフレ傾向にある場合、需給バランスが締まっていれば価格転嫁が容易です。しかし需要が乏しい時には次の流通段階への価格転嫁がスムーズには進みません。
 グラフで以上3つの段階における価格指数の推移を示しておきました。アベノミクスが始まる前の2011年~2012年初めまでは、素原材料は二ケタ以上の上昇、中間品も相応に上昇していたにもかかわらず、最終財は前年比でマイナスを続けています。ところが、2013年以降は「素原材料」⇒「中間品」⇒「最終財」へと順調に価格転嫁が進んでいます。つまり、企業間市場において需給バランスが一気に好転したことが分かります。

重要段階・用途別企業物価指数の働きを振り返る

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執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2014年12月10日号

以上