再考 インフレ論

第4回 景気、生活実感から乖離しがちな消費者物価指数

2015年5月26日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年11月10日号

物価上昇とは何を意味するのか、景気や企業経営、為替、金利等の経済要因とどのように関係するのか、さらにはインフレは経済にとって歓迎すべきものなのか等々、物価を多面的に紹介します。(全6回)

前回までは消費者物価指数=消費者物価指数(生鮮品を除く)(総務庁統計局発表)として説明してきました。しかし、この指数はある意味では不完全なデータだともいえるのです。以下主要なポイントを2つ掲げておきます。

 物価統計は基本的に景気動向の判断材料としての利用が想定されています。異常気象などによる野菜など生鮮食品の価格の乱高下は、景気とは直接関係がないので「生鮮食品を除く」のです。
 欧米等ではさらにエネルギー価格を除いた「生鮮食品及びエネルギーを除く」データが一般的です。たとえば中東諸国での地政学的な問題による原油価格の大幅な変動は、本来の景気とは関係のない要素になるからです。
 グラフは「生鮮食品除く」がより高い水準で推移していることを示しています。エネルギー源のほとんどを輸入に依存している我が国では原油、天然ガスなどの価格変動が物価に与える影響がとても強いので、エネルギーを含めたほうが消費者の生活実感に近いといえます。消費増税後の今年8月時点では、「生鮮食品除く」が前年比でプラス3.1%であるのに対して「食料及びエネルギー除く」がプラス2.3%にとどまっています。
 2つ目に消費者物価指数は「実態よりも高く算出されがち」であることにも注意が必要です。指数を算出する際には消費者が個別品目ごとに「どのメーカーのどの商品をどの程度購入する」ということが決まっています。しかしより安く性能のいい製品が発売されれば、私たちがそちらに購入を変更することは日常茶飯事です。
 にもかかわらず我が国の消費者物価指数は「どの商品をどの程度買うか」という基準を5年に一度見直すにとどまり、その間に私たちが買う商品を変えても、それは一切考慮されません。このため指数は高めに算出されがちです。

 こうした現実との乖離を埋めようとする試みとして最近脚光を浴びているのが、日経・東大日次物価指数です。全国のスーパー300店におけるPOSデータ(販売時点管理データ)に基づき毎日算出されています。対象品目は20万点超。POSデータを利用することで価格だけではなく、販売数量も同時に把握できるのが最大の特徴です。消費者の購入商品の変動等もきめ細かくすくい上げることで、より実態に近い物価水準を計測できるというわけです。
 ちなみに、8月時点での日経・東大日次物価指数は前年比で0.53%下落していました。しかし、同じ調査対象品目についての総務庁発表の消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比で0.99%上昇しているのです。
 日銀は2015年度中に2%程度のインフレを目指していますが、その基準になっているのが「生鮮品を除く」基準の消費者物価です。ただ、以上の点を考慮すれば、景気あるいは生活実感から乖離しがちなこのデータだけを政策目標に掲げるというあり方には修正が必要なのかもしれません。

2つの消費者物価指数

2つの消費者物価指数


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2014年11月10日号

以上