再考 インフレ論

第3回 わが国のインフレ動向を決める円相場と国際商品市況

2015年5月19日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年10月10日号

物価上昇とは何を意味するのか、景気や企業経営、為替、金利等の経済要因とどのように関係するのか、さらにはインフレは経済にとって歓迎すべきものなのか等々、物価を多面的に紹介します。(全6回)

 前回はインフレを引き起こす代表的な6つの要因を掲げておきました。さて、では現在進行中の消費者物価の上昇はこのうちどの要因によるものでしょうか?
 おそらく、最大の要因は円相場と国際商品市況の高騰である、と直感的に反応される方が多いと思います。われわれが物価上昇を実感として感じるのは、ガソリン、電気料金並びに小麦製品など、元をただせばそのほとんどが輸入品の値上がりによるものだったはずです。
 グラフはこうした直感がどの程度正しいのかを検討するために描いたものです。
 インフレ率としては消費者物価上昇率(前年比)をとりました。もう1つは「ドル円相場」と「CRB指数」を掛け合わせた合成指数です。「CRB指数」とは最も注目度の高い国際商品指数です。原油などのエネルギー源のほか、鉄鉱石、大豆など幅広い国際商品の総合的な価格水準を示すものです。この値が大きくなればなるほど円建てでの輸入原材料価格が上昇するのです。
 グラフを見ると消費者物価指数の上げ下げにやや先行しながら「ドル円相場」*「CRB指数」の値が動いていることが分かります。いま進行中のインフレは2013年から始まったのですが、「ドル円相場」*「CRB指数」はそれに先んじて12年半ばから上昇に転じています。現在進行中のインフレについても、過去と同じく為替相場と国際商品市況からの影響がとても強いことがわかります。わが国はこうした資源・原材料の輸入比率が高いため、どうしても円相場と国際商品市況から受ける影響力が強くなるのです。
 つまり、消費者物価の動向を先読みするには、「ドル円相場」と「CRB指数」に代表される国際商品の動きをチェックすることが有効であることがわかります。
 もっとも以上は消費者物価指数の動きに即して、その要因を多少分析的に見てみたものですが、企業間で取引される財の平均価格を示す企業物価指数については、前回インフレ要因の1つとして掲げた需給バランスが需要超過に傾いていることも物価指数上昇に大いに影響を与えています。
 とくに公共事業の大盤振る舞いによる建設資材の値上がり等はむしろ需給バランスの好転によるものだと考えていいでしょう。円安や海外原料高により円建ての資源価格の上昇が各種資材の買い急ぎを促し、需給バランスを好転させている面もあると思われます。
 日銀は消費者物価上昇2%というインフレ目標を掲げて金融政策を行っているのですが、そのインフレが主に円安あるいは海外原材料の高騰からもたらされるものであるのなら、家計等の実質購買力を削ぐことにより景気を引下げるという側面を持つことには留意が必要です。

消費者物価指数に先行するドル円相場 CRB指数

消費者物価指数に先行するドル円相場 CRB指数


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2014年10月10日号

以上