再考 インフレ論

第2回 インフレはその原因により5つに分類される。 インフレの種類により景気に与える影響は全く異なる。

2015年5月12日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年9月10日号

物価上昇とは何を意味するのか、景気や企業経営、為替、金利等の経済要因とどのように関係するのか、さらにはインフレは経済にとって歓迎すべきものなのか等々、物価を多面的に紹介します。(全6回)

 「物価上昇時には景気は拡大している」。われわれが漠然と思い描いているこうした常識は少なくとも過去35年のデータでは証明できないことを前回見ていただきました。さてその理由は?
 おそらくここまで来ると、多くの方は思い当たることと思います。そうです。「インフレ」にはいくつかの種類があり、それにより景気との関係は異なるのです。前回の記事を注意深くご覧になった方はお分かりだと思うのですが、過去35年間にわたくしたちが経験したインフレは、主に海外での原材料の高騰か、もしくは消費税の引き上げによるものだったのです。一方、私たちが「インフレ時は景気拡大」と思い込んでいるときにイメージしているインフレは「買いが増えれば物価が上がる」というタイプのものです。しかし過去35年間、私たちはこの種のインフレにはほとんど遭遇してこなかったのです。
 ここでインフレの種類いかんで、景気との関係は異なることがはっきりしてきました。以下に代表的なインフレの種類を掲げておきます。
1・需給バランス好転による物価上昇
 需給バランスが好転するとは一般には買いが増えるということ。つまり個人消費と企業の設備投資が増えれば物価は上がります。「ディマンドプルインフレ」と呼ばれるものです。このときには景気拡大と物価上昇は蜜月状態を保つことができます。
2・消費税引上げによる物価高
 1989年の消費税導入、97年と2014年の税率引上げ。これは明らかに個人、企業の実質購買力をそぐことを通じて景気後退を促します。
3・海外原料高による国内物価高
 原油など原材料価格の高騰は我が国のあらゆる生産物のコストを引上げます。「コストプッシュインフレ」です。生産コストが上がれば企業利潤が減り、かつ物価も上がるのですから、これも景気後退を促します。
4・円安による物価高
 円安は原油、食料品等の輸入品の価格(円ベース)の上昇をもたらします。この場合も輸入品に対する購買力が低下するため、景気後退圧力として働きます。ただし一方では、円安は輸出企業の価格競争力を高めるため、企業収益拡大←→株高・賃上げ←→景気拡大を促すという側面も持ちます。
5・通貨量増による物価上昇
 中央銀行が供給する通貨量が増えれば購買力が増えるわけですから、需給バランスは買い超過に傾き、物価は上がりがちです。

 つまりインフレが景気に与える影響を考えるに際しては、インフレの種類を特定することが重要だということが分かります。ただし、現実にはある任意の時期におけるインフレの種類は上記のうちの1つに特定されるわけではありません。たいていの場合は複数の要素が絡み合っているものです。
 さて、こうした視点から見ると現在進行中のインフレをどのように認識、評価すればいいのでしょうか?
(以下次号に続く)。


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2014年9月10日号

以上