観光を科学する

第3回 MICEの経済効果

2015年1月27日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年2月20日号

訪日外客誘致(インバウンド)の現状とその課題や対策について紹介します。(全3回)

 前回は、訪日外客消費(2013年の推計値1兆4168億円)を拡大させるため、訪日外客数の増加に加えて、一人あたりの旅行中支出単価(13年平均は約13.7万円)を上げていくべきだと指摘した。訪日外客数増にはビジット・ジャパン・キャンペーン等のプロモーションと、初めて来日した外国人をリピーターにする受け入れ体制のさらなる充実が必要である。一方、旅行中支出単価の向上には、今回紹介するMICE促進が有効な手段の一つである。

MICEとは
 Meeting, Incentive travel, Convention, Event/Exhibition の頭文字を並べたものがMICEである、Meeting は、企業が実施する会合や会議のことであり、例えば、海外拠点を交えた経営会議や営業会議、海外投資家や取引先向けの説明会やセミナー等である。Incentive travel は報奨旅行と訳され、業績優秀な従業員や代理店等への表彰や研修等を目的として企業が実施するものである。日本では報奨旅行は下火だが、成長著しいアジアの企業にとっては、従業員や代理店等のインセンティブを向上させる手段として重要視されており、日本はその目的地として人気が高い。13年3月にはインドネシアの大手キッチン用品メーカーから総勢2800人ほどが来日し、東京での表彰パーティの後、富士山、京都、大阪等のゴールデンルートを観光した。Convention は国際会議のことで、国際機関、政府、学会等が主催する総会や学術会議のことである。記憶に新しいところでは、IMF
/世界銀行の12年次総会が東京で開催され、東京都の試算では、世界180以上の国から、財務大臣や中央銀行総裁など約1万1600人(日本人を含む)の公式参加者のほか、各国の金融機関・メディア関係者など、多くの外国人が来訪した。その経済波及効果は都内で約189億円、全国で約250億円と推計されている。Event は東京国際映画祭や世界陸上競技会等の文化・スポーツのイベントのことであり、Exhibition は展示会・見本市のことである。いずれも大きな集客力のある催しだが、海外の展示会・見本市は、商談が行われ売買契約が締結される場となっており、来訪者の開催地での消費行動よりも、商談による契約誘発効果の高さが重要視されている。日本の展示会・見本市も徐々にこの方向にシフトしている。

MICE促進の可能性
 前回まで述べてきたインバウンドは一般観光客を含んだ広義の訪日外客を対象としたものであるが、MICEは企業、あるいは学会や政府機関の活動であり、訪日する人の大半はビジネス客である。このため、一般の観光客よりも、宿泊や交通はもとより、滞在中の活動に費やす額が多い。正確な数字は試算されていないが、一般観光客の数倍の旅行中支出が見込まれると言われている。また、MICEでの訪日外国人はビジネスの意思決定層、あるいは日本企業にとって重要な取引相手であることが多く、消費額の大きさだけでなく、彼らが日本ファンとなることで企業取引が円滑に進む等の間接的な効果も期待される。
 MICEは全容を把握することが難しく、全体の市場規模は推計されていないが、観光庁が国際会議開催に伴う経済波及効果を算出している。それによると、10年の日本での国際会議開催(2159件)に伴う経済波及効果額は5144億円(直接的1369億円、間接的3775億円)であり、経済波及効果額が多かったのは、1位東京都(429億円)、2位神奈川県(321億円)、3位福岡県(286億円)の順であった。また、報奨旅行について日本政府観光局(JNTO)が実施した調査によると、インドネシア人が希望する目的地は、シンガポールに続いて、日本とタイが2位となっており、日本国内では東京への訪問を希望する企業が65%と群を抜いている結果であった。MICE促進における東京の可能性は大きいと言えよう。


執筆者
首都大学東京 都市環境学部 特任准教授 矢ケ崎 紀子

掲載:東商新聞 2014年2月20日号

以上