社員、地域、顧客に必要とされる「おもてなし経営」とは

第6回 地域の目を経営に取り入れる

2015年1月6日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年3月20日号

具体的な事例を交えながら「もてなし経営企業」のコツをご紹介します。(全6回)

■地域住民に会社を見てもらおう
 社員、顧客、地域と、三者に対するおもてなしで躍進する「おもてなし経営企業」。最終回の今回は「地域へのおもてなし」の様々な事例を紹介します。
 たとえ、地域の人々と直接、取引をすることのない業態であっても、肝心な人財採用では地元と深く係わりますし、何らかの土地の恵みを受けているのは事実です。そして何よりもそこには大切な家族がいます。
 ある部品製造企業は、週に一度、ボランティアで近隣の掃除を行なっています。夏には地元のお祭りに全社を挙げて参加し、秋には本社敷地で行なう会社祭りに住民を招いて盛り上がります。これで儲かるかは誰にも分かりません。しかし、お祭りを計画したり、踊りを練習したり、全社員でつくる過程は、縦横の人間関係を豊かにしてくれます。拍手を浴びて全員で踊る経験は団結力を強めてくれます。「お祭り楽しかったよ」、「いつも掃除ありがとう」と、地域住民から掛けられるひと言は、やりがいや愛社精神などプラスの精神を育んでくれるのです。
 ある不動産管理企業は、約20人の社員数で年間250以上の地域活動を行なっています。毎日早朝に行なう最寄駅の掃除、小学校の登下校の交通整理、本社の2階に設けられたスペースでは学童保育も行なっています。関東からマイクロバスに乗り、被災地ボランティアに出掛けた数は数え切れません。全ての地域活動を地元住民と必ず一緒に行い、地域に根付かせることを大切にしています。この会社では、社員一人当たり毎日2時間を地域活動に当てている計算になります。数字だけ見るとロスですが、決算書には表れない「気づき」「思いやり」「協調性」といった資産が増え、本業の不動産管理の質的向上につながっているのです。

<おもてなし経営企業に見られる地域へのおもてなし例>
●社員総出で地元の祭りや運動会に参加する
●自社の祭りに住民を招く
●コンサートを開催して住民を招く
●定期的に社員が道路や公園を掃除する
●家族見学会を行なう
●地域の人々とともにボランティアを行なう
●地元農家の食材を会社の敷地で直販する
●店舗内にラウンジを設け、住民の憩いの場に
●地元の学校などに専門分野を教えに行く
●社員に親孝行を積極的に推奨する、など

■地域の目が正道に導く
 「地域」というと大きく捉えどころのない存在に思えますが、そこには住民がいて、家族がいます。先の製造企業では、子供が親の会社を見学する「逆参観日」を設けていますし、自動車点検、工務店、リサイクル業、スポーツクラブなどあらゆる業態の企業で、家族を招くイベントが行なわれています。
 あるメッキ工場で家族見学会を行なった際は、子供たちに金属を虹色にメッキする作業を体験してもらいました。一人の子供は後日、「うちのお父さんは虹をつくっているんだよ!」と友達に自慢したそうです。親としては一生忘れられない言葉ではないでしょうか。
 もし、「うちの会社など人には見せられない」と思うのなら、徹底した掃除と挨拶から始め、発展途上のうちに地域や家族に会社を見てもらうのも手です。アンケートを取れば通信簿代わりになり、改善する気にもなるでしょう。駆け出しのアイドルが人に見られてどんどんきれいになっていくように、企業も地域の目を取り入れて切磋琢磨していくことは可能です。さらに言えば、地域の目は、企業が間違った道に行かないガードレールの役目を果たしてくれます。ぜひ地域へのおもてなしを経営に取り入れ、互いの笑顔が行き交う環境に役立ててください。
 そして最後に伝えたいことがあります。一番の社会貢献は本業である、ということです。厳しい時代に皆様の会社が存在しているということは、必要とされているからです。本業におもてなし経営を取り入れ、より必要とされる企業になられることを願い、筆を置きたいと思います。


執筆者
ジャーナリスト・中小企業診断士・経済産業省おもてなし経営企業選選考委員 瀬戸川 礼子

掲載:東商新聞 2014年3月20日号

以上