社員、地域、顧客に必要とされる「おもてなし経営」とは

第5回 お客さまへの感動のおもてなし

2014年12月22日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年3月10日号

具体的な事例を交えながら「もてなし経営企業」のコツをご紹介します。(全6回)

■出迎えも立派なおもてなし
 ①社員、②顧客、③地域と、三者へのおもてなしをすることで人に必要とされ、愛される「おもてなし経営」。今回は、②顧客へのおもてなしの事例を紹介しましょう。
 筆者が訪れた島根県のある企業の出迎えは印象的でした。取材予定の15分前に着いたので、エントランスが見える少し離れた場所に車を止めて待機していました。すると間もなく社長が現れ、そのまま立っているのです。酷暑の中、スーツ姿でネクタイを締め、しかし表情は涼やか。特別なお客さまが来るのかと思いましたが、私のためだと気付いて慌てて車を降りました。どんな天気の日にも、経営者自ら客人を迎える。ありそうでない、忘れられないおもてなしです。
 「おはようございます!」「こんにちは!」と、誰に対しても清々しい挨拶ができる企業も気持ちがいいものです。これは、経営者や上司が挨拶を率先する企業にだけ根付くのだと思います。
 出されるお茶が評判の企業もあります。日本はお茶の国ですが、本当に美味しいお茶が出ることは意外と少ないものです。しかしこの企業はいつも美味しく、季節の折り紙とお菓子も添えられています。「せっかく来てくれたのだから、少しでも気分よくご滞在いただきたい」という社員の思いやりが生んだ習慣です。

■見えなくなるまで手を振る
 訪問客や来店客の名前を覚える基本中の基本に、「ひとほめ運動」を加える企業もあります。「○○さん、素敵なお名前ですね」、「○○さんは若々しいですね」など、ちょっとした褒め言葉が展開をスムーズにしてくれます。
 工場見学が多いある企業は、見学中に撮った写真を直ちにカレンダーに加工し、帰り際に手渡します。みなに感激される贈り物です。
 ある美容室では、美容師らが自主的に年賀状を出しています。自分が担当する400人の顧客それぞれに手掘りの判子を彫って年賀状に押し、「取りに来てね!」と再会を待つ努力に脱帽です。顧客や取引先が帰る際、手の空いている人が出来る限り外に出て、見えなくなるまで手を振る企業もあります。胸に残る場面です。またあるレストランでは、ゲストが使うナプキンにその人の頭文字を刺繍し、お土産にしています。顧客の名前が印刷されたカップを用意する会社もあります。

■おもてなしとサービスの違い
 こうしたおもてなしに共通するのは、「あなただけ」に行う点です。「全員に一律ドリンク無料」などの「サービス」とはここが違います。おもてなしとサービスは優劣ではなく、目的や性質が違うのです。境目はあいまいですが、目安になる図表をつくったので参考にしてみてください。おもてなしは仕事というより一人の人間として行なう情感的な面が強いのも特徴的です。だから、想像力や共感力、表現力、聞く力などの人間力が問われるのです。おもてなしとは、人間力のある人が、やらされ感などなく、「喜んで」することが大前提になるものです。される側の立場で考えれば分かると思います。
 会社と働く人同士、社員同士が、互いをもてなし、社内から発案が増え、皆が喜々として実行するようになれば、おもてなし経営に大きく近づいたことになるでしょう。


執筆者
ジャーナリスト・中小企業診断士・経済産業省おもてなし経営企業選選考委員 瀬戸川 礼子

掲載:東商新聞 2014年3月10日号

以上