社員、地域、顧客に必要とされる「おもてなし経営」とは

第4回 おもてなしは“投資”

2014年12月16日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年2月20日号

具体的な事例を交えながら「もてなし経営企業」のコツをご紹介します。(全6回)

■おもてなし経営企業の努力
 働く人、顧客、地域と共に幸せになるおもてなし経営企業は、「何のために仕事をやっているか」という理念が明確です。そして、理念を現実のものとするため、働く一人一人が理念に沿った言動をしているかを正当に評価する風土があります。理念と評価がワンセットとなり、日々のぶれないおもてなしを支えているのです。ここまでが前回でした。
 ただ、理念があり、年に1~2回評価したからといって理念が浸透したり、組織が活性化するわけではありません。おもてなし経営企業は多くの時間を費やして、ほかにも様々な手法を取り入れています。今回は、具体的な取り組みをいくつか紹介しましょう。

■半年に1回は全員で合宿
 朝礼や会議で話し合いの場を設けつつ、半年に1回は1泊2日の合宿をする企業があります。公式行事ですから全員参加です。宿泊付きの研修施設で缶詰になりますが、緑豊かな研修施設を選んでいるので、休み時間や翌朝に散歩もできます。
 気分転換しながら、「もっといいおもてなしをするには」、「なぜあのお客さまは去っていったのか」、「理念と評価のつながりを見直してみよう」など、日中から皆で真剣に話し合いをするのです。
 なお、活発な話し合いにはコツが要ります。「批判厳禁」などルールを決めたり(ブレインストーミングという技法の一つ)、プロの講師にリードしてもらう企業もあります。

■入社式・送別会・誕生会
 これは行なう企業が多いでしょう。せっかくなのでパワーアップしてみてはいかがですか。例えば、上司や部下が普段言えない思いを手紙に綴り、みんなの前で読むという企業があります。もちろん書くのは愚痴ではなく感謝の思いです。
 入社式では本人に内緒で、親に書いてもらった手紙を読む、というシーンを取材したことがあります。本人も、手紙を読む司会者(先輩社員)も、聞いている参加者も、親の深い愛情に触れて涙し、感動と一体感に包まれました。
 送別会では、会社での出来事を年表にしてあげたり、定年退職の人には本人と過ごした年月を写真集にして渡す企業もあります。どちらも胸を打つ贈り物です。
 このように、社内に「ありがとう」が飛び交う組織は明るいです。

■毎日、全員で社内外を掃除
 これもよく聞くと思いますが、皆で掃除をすることできれいさのほか、清々しく前向きになれる、仕事と関係ないことを一緒にする事で、話が弾みやすく対人関係がよくなる、整理整頓で効率が上がるなど、利点が多いです。掃除以外にも、地域イベントやボランティアなどで同様の効果を得る企業もありますが、ボランティアの場合は純粋に「力になりたい」という気持ちが大切ですね。

■経費ではなく投資
 こうした取り組みは売上高と直結してはいません。しかし、おもてなし経営企業は「時給を払ってでもやる価値がある」、「経費ではなく投資です」と語ります。そして実際にその通りです。
 普段から、「全員で同じ方向を見る場」を設けていると、「当社はこういうことを大切にするんだ」、「これはしよう、これはしてはいけない」と、皆の理解が進みます。社員の思いもくみ取りやすくなります。つまり、理念と評価、そして働く人との認識がマッチしていくのです。優良企業は最低でも5つ、多い企業は20くらいも、こうした取り組みを地道に続けているものです。


執筆者
ジャーナリスト・中小企業診断士・経済産業省おもてなし経営企業選選考委員 瀬戸川 礼子

掲載:東商新聞 2014年2月20日号

以上