始めよう!知的資産経営 自社の強みを“見える化”

第5回 知的資産経営報告書の作成事例(その3)

2014年7月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年6月10日号

知的資産経営とは、知的資産(=「強み」)を把握し、それを活かして業績(企業価値)向上に結びつける経営です。知的資産経営報告書の作成とその活用事例について紹介します。(全5回)

1. 株式会社オンネット・システムズの報告書作成事例
 連載最終回の今回は、株式会社オンネット・システムズ(重永裕祥社長)の事例をご紹介します。
 同社は、台東区でソフトウェア開発業を営んでいます。もともと、販売管理や購買管理、在庫管理などの基幹系業務システムとよばれるソフトウェアの受託開発を中心に事業を行ってきました。近年の受託開発需要の落ち込みの中で、それまで培ってきたノウハウを活かす形で、販売管理一体型POSシステム「Onnet-POS」をはじめとした自社製パッケージソフト商品の整備を進めてきました。
 そうしたプロダクトの販路開拓を進める過程で、知的資産経営報告書の作成を勧められる機会がありました。自社の強みをまとめるという点に惹かれ、報告書作成を決めました。

2. 同社の知的資産
 社長と支援者との数度にわたる検討会の末、「基幹業務システムへの対応力」と「自社製商品の保有」という直接的な強みとともに、これを支えるものとして「基幹系業務への深い理解」や「優れた生産と運用の技術」などの強み=知的資産を、その構造とともに整理しました。
 取りまとめにあたっては、「具体的にはどのようなことか」「本当に知的資産として評価できるのか」などの点にシビアな検討を加えました。また、同社のビジネスにその強みがどう生かされ、今後は何を補強していくべきなのかという視点をもって整理を行いました。

3. 取り組みの成果と意義
 数多くの受託開発経験を持ちながらも、それらがソフトウェアという目に見えないものであった同社にとって、これまでの蓄積、強み、そして課題を、目に見える形で「見える化」できたことが、知的資産経営報告書作成の最大の成果でした。
 重永社長は、「当社のマーケティングは、報告書作成以来、その内容をベースとしている」「何かあればそこから出発する、いわば憲法のようなもの」と語っています。
 また、同社では、開発・販売のパートナー企業にこの報告書を開示。同社の真摯な姿勢を理解してもらい、信頼度を高めることにつながっています。

4. 今後の取り組み
 知的資産経営報告書作成を通じて見えてきたことのひとつに、「作り出したものを販売するための取り組みの重要性」があります。「よいものを持っていれば売れる」のではなく、「よいものを、会社としての強みを含めて、いかによく見せて売るか」の領域が大切と気づきました。
 同社では、知的資産経営報告書の中で、営業活動分野を強化していくためのマネジメント指標(KPI)を明らかにしています。今後は、結果オーライの経営ではなく、営業プロセスのマネジメントを行い、結果につなげていこうとしています。

5. まとめ
 知的資産経営報告書の作成の取り組みは、①会社の経営そのものを強化することに役立つとともに、②会社の外部関係先への自社のアピールに役立ち、さまざまな機会獲得に貢献するといえるでしょう。
 なお、東京商工会議所では、同社をはじめとした事例を含め、以下のサイトで知的資産経営をご紹介しています。
http://www.tokyo-cci.or.jp/chitekishisan/
 また、「知的資産経営入門ガイドブック」も発刊されていますので、最寄りの経営指導員にお問い合わせください。


執筆者
中小企業診断士 土田 健治

掲載:東商新聞 2013年6月10日号

以上