始めよう!知的資産経営 自社の強みを“見える化”

第3回 知的資産経営報告書の作成事例

2014年7月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年4月10日号

知的資産経営とは、知的資産(=「強み」)を把握し、それを活かして業績(企業価値)向上に結びつける経営です。知的資産経営報告書の作成とその活用事例について紹介します。(全5回)

1. 佐藤真空株式会社の報告書作成事例のご紹介
 今回は、知的資産経営報告書を作成された佐藤真空株式会社(品川区:製造業)の事例をご紹介します。同社は、1932年に創業し、昨年80周年を迎えた老舗です。作成にあたっては、中小企業診断士の糟谷豊氏が支援されました。

2. 作成のきっかけ
 同社が知的資産経営報告書を作成したきっかけは、たまたま同社がインターネットでの情報発信の改善の検討をしているタイミングに、糟谷氏が佐藤社長に知的資産経営報告書を紹介したことでした。
 製品のアピールだけでなく、80年の歴史など、無形の資産をアピールすることが重要であり、そのツールとして、知的資産経営報告書が有効であるとの説明を受け、佐藤社長は即断で、作成することを決めました。
 同社は、すでに80年の歴史を「PRIDE」という題名のコンセプトブックにまとめており、SWOT分析も実施済みだったので、材料は揃っていました。このため、知的資産経営報告書の有用性についての気づきも早かったのだと思います。

3. 報告書作成のプロセス
 社員の積極的関与をはかるため、原案作成の段階までは社長は参画せず、支援者と社員代表だけでプロジェクトチームを作り議論を進めました。支援者は、社員の本音を聞き出すことに徹し、一方の社員は支援者との議論をふまえて、社員自らが報告書の原案を作成しました。
 何度も議論したため時間はかかりましたが、その結果、同社の知的資産として、
①80余年の歴史
②“モノづくり”へのこだわり
③全国展開の販売ネットワーク
④“ユーザー様のため”をモットーとした提案力
⑤オーダーメイド設計を低価格で提供できる製品力
⑥70%を超すリピート率
⑦商標登録(PHILに込めた思い)
の7点を抽出しました。
 最後に、社長も参画してレビューを行い、報告書を完成させました。

4. 80年の歴史とブランド
 「80年の歴史」を一番の知的資産に挙げることについて、「これは結果であって、知的資産とは言えないのではないか」という意見もありましたが、「一度も赤字を出さずに事業を継続してきたことは、当社の信用力の証だと」と結論づけました。
 同社のブランド「PHIL」は、“PHILOSOPHY”の略であり、企業理念を体現しています。さらに「PHIL」は、ギリシャ神話の中で、「ヘラクレス」を「英雄に育てるトレーナー」役として登場する人物の名前でもあります。
 佐藤社長は、「ユーザー様に貢献し、ユーザー様に感動して頂ける製品とサービスを提供できるメーカーになりたい」という思いを、この「PHIL」というブランド名に込めたのでした。

5. 報告書作成の効果
 プロジェクトに参画した社員は、「当社では当り前だと思っていることも、他社にはない強みであることを認識し、この強みを生かしていく必要性を痛感した」「会社の価値を再認識した」と話しています。
 また佐藤社長は、全社員を対象とした報告書の発表会を実施し、その場を通じて、過去からの経緯と、今後こう在りたいという経営者のビジョンと目標を共有してもらえたことは、大きな成果だと実感しています。

 次回は、サービス業の企業の知的資産経営報告書の事例を紹介します。


執筆者
中小企業診断士 土田 健治

掲載:東商新聞 2013年4月10日号

以上