日本経済を読み解く おさらい!経済統計データの基本

第6回 円相場、株、金利データはどう読めばいいか

2014年6月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年5月20日号

多くの経済活動を定量的に示す統計データの読み方の基本を、時事的な話題とともに解説します。(全8回)

 前回まではGDPを軸に、家計、企業、労働といった景気の基本を形作る経済データについて説明してきました。これらの経済分野は一般に実体経済(リアルエコノミー)と呼ばれます。
 一方、これとはちょっと違った分野でいくつかの重要な経済データがあります。株価、円相場、あるいは長短金利の動きです。これらの動向は、景気に重大な影響を及ぼします。

●値嵩株の動きに左右されがちな日経平均株価
 市場経済に支えられた自由主義経済の根幹をなすのが株式会社制度です。現在、日本全体の株式の平均的な(かつ総合的な)価格水準を計る上で最もポピュラーなのが「日経平均株価」。東京証券取引所の上場銘柄から225を選択、これらの株価の平均的な水準として算出されています。注意すべきことは日経平均株価が持つ特性。値嵩株(値段の高い株式)が多く、これらの株価変動からの影響を受けやすいことです。
 一方、東証一部全銘柄を対象に時価総額(株価×上場株式数)を基準にして算出される「TOPIX(東証株価指数)」は、時価総額が大きいので、企業規模が大きな銘柄の変動の影響を受けやすいのです。

●企業の外貨交換レートを決める銀行間直物為替レート
 円相場は一般に、米ドルとの交換比率として示されます。これは「ドル円相場」と呼ばれています。
 わが国でのドル円相場は、大手金融機関がドルと円を交換し合う東京外国為替市場で付いた銀行間直物(じきもの=契約してから翌々日に受け渡す)為替相場で成立したドル円相場が基準になります。企業、個人などがドルと円の交換を行うレートは、銀行が提示する対顧客向け為替レートを基準に決まります。もっともここで提示されるレートが適用されるのは「10万米ドル相当額以下」の小口取引。これを超える取引は相対(交渉)で決められます。

●10年長期国債利回りは長期金利の要
 政府が発行する国債のうち期間10年の国債を、大手金融機関が売買した結果ついた利回りは、わが国の長期金利の指標的な役割を果たします。これが企業向けの長期プライムレートや固定住宅ローン金利などの長期金利に大きな影響を与えます。

●イレギュラーな動きを示しつつある株価と金利
 多くの人は安倍政権誕生が決定的になった昨年11月以降、円安と日本株高が同時に進行していることをよくご存じだと思います。これは、円安→自動車、電機、機械などの輸出企業の業績回復→株高というメカニズムによるものです。これが株価と円相場の原則であり、現在もそのメカニズムが働いているのです。
 一方、株価と金利の関係については現在、やや変則的な動きに転じつつあることはあまり知られていません。図にある通り、昨年までは株と金利は同じ方向で動いてきました。しかし、今年に入ってからは全くその関係は逆転してきたのです。
 「株価と金利」は同方向で動くというのが原則です。株価が上昇時には「株価が上昇」→「株式市場へマネーが流入」→「そのマネーは債券市場から流出」→「債券が売られる」→「債券価格下落・利回り上昇」という関係です。しかし今年に入ってからはこうしたメカニズムは全く働いていないように見えます。これは主に次のような理由によるものです。
 「大々的な金融緩和」→「マネーが株式、債券市場に流入」→「株価上昇・債券価格上昇=債券利回り低下」というメカニズムが働いているのです。「株式が買われているときには債券が売られている」ではなく「株式、債券両市場にマネーが流れ込んでいる」のです。そのくらい、現在は大量のマネーが市場には流れ込んでいるのです。「異次元の金融緩和」と呼ばれる所以です。


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2013年5月20日号

以上