日本経済を読み解く おさらい!経済統計データの基本

第5回 景気全体を俯瞰するためのデータを読む

2014年6月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年5月10日号

多くの経済活動を定量的に示す統計データの読み方の基本を、時事的な話題とともに解説します。(全8回)

前回までは、主な景気関連データについて連想的にご紹介してきました。そのよりどころとしたのはGDPです。つまり、GDPを構成する主要な要素として「輸出入」に続き「(家計)個人消費」→「家計収入」→「労働市場」→「企業活動」を採り上げてきました。今回は、GDPそのものについて、やや詳しく説明します。

●GDPをどう読むか
 アベノミクスの最終目標は「デフレ経済からの脱却」です。「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「成長戦略」の3本の矢はいずれもそのための中間目標です。では経済がデフレから脱却したかどうかは何によって計られるべきか。これを端的に示すのがGDP(国内総生産)なのです。
 GDPは「(一定期間内に)どの程度の経済的な付加価値を生産したか」を示します。「生産」されたものは「分配」され、「分配」される過程では「支出」を伴います。このため一国の経済においては「生産」、「分配」、「支出」からみた金額が等しくなります。
 一般にGDPの内訳は「個人消費(民間最終消費支出)」「設備投資(民間企業設備投資)」、「政府の公共工事支出(公的固定資本形成)」というように支出ベースで示されます。内閣府発表のGDP統計では、前四半期のGDPに比べて当該四半期のそれがどの程度伸びたかを年率に換算した値が注目されます。その場合、物価上昇率を差し引いた実質値が重要です。昨年(10―12月期)の実質GDP伸び率は0.2%でした。
 これが経済成長率です。わが国は長期にわたり極めて低い成長率を続けてきました。1995年~2012年の18年間の年平均成長率は0.9%でした。
 GDPを支出面からみると、最大の要素は個人消費で6割近くを占めます。ついで企業の設備投資や政府の公共事業が10数%。さらには変動が激しい純輸出(輸出から輸入を引いたもの=国外の人による支出)があります。
 GDP統計を読む上で重要なことは、全体の伸びもさることながら「どの要素がどの程度寄与したのか」という寄与率です。こういえば「シェアが圧倒的に高い個人消費の影響力が大きいのでしょうね」と言われそうです。しかし、ちょっと違います。なぜか。
 たしかに個人消費の占めるシェアは圧倒的に高いのですが、その変動率は他の要素(設備投資、公共工事等)に比べて小さいのです。
 図でGDPを構成する主な要素別にGDP変動に対する寄与率の推移を示しておきました。2012年、2010年の景気拡大期には個人消費の寄与率は高かったのですが、それ以外の時期はむしろ純輸出、企業の設備投資の寄与率の方が高かったのです。つまり、わが国の景気は輸出(海外の人がどれだけ買ってくれるか)と設備投資(企業がどれだけ積極的に業容を拡大しているか)に左右されがちなのです。
 さてアベノミクスでは、どの要素が伸びることでわが国のデフレ経済脱却が達成されるのでしょうか?

●景気動向指数
 わが国の景気全体を示す総合指標として、また景気の転換点を判断する目的で作成されるのが景気動向指数です。GDP統計と同じく内閣府が作成、発表します。景気の動きを敏感に反映する計28のデータを「先行」「一致」「遅行」の3つの系列に分類したうえで、それぞれのデータの平均的な動きを指数化したものです。このデータは毎月発表され、速報性に富み、注目度の高いデータです。

●日銀短観
(企業短期経済観測調査)
 日本銀行が四半期に一度、全国の企業経営者に業況に関するアンケートを実施し、そこで得られた諸データを集計して発表するものです。景況感が「良い」と答えた回答比率から「悪い」の比率を差し引いて求められる「製造業の業況判断指数」は特に重要です。調査後1カ月未満で発表されるなど速報性に富むのが特徴です。


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2013年5月10日号

以上