日本経済を読み解く おさらい!経済統計データの基本

第4回 企業活動の実態を多面的に見る

2014年6月6日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年4月20日号

多くの経済活動を定量的に示す統計データの読み方の基本を、時事的な話題とともに解説します。(全8回)

 前回は、経済発展の度合いを測る代表的な指標であり、GDPの6割近くを占める個人消費関連データの読み方、そしてそれに大きな影響を与える現金給与、残業時間さらには労働関連指標の読み方を説明してきました。今回はこれを受けて、「こうした給与、残業時間、労働環境は何によって決まるのか」について連想的に辿っていこうと思います。

●設備稼働率
 直感的にお分かりの通り、前述の各指標を決定づけるのは企業の活動レベルです。企業活動が拡大している時期には労働時間も給与額も増えますし、失業率は低下します。さて企業活動が活発になるときにはまずどんな兆候が表れるかを考えてみましょう。 
 真っ先に変化するのは、前回説明した「所定外労働時間」に対応する「設備稼働率」です。生産レベルを上げようとする場合、新しく人を雇ったり、設備を更新するより前に、まず
現在の人員体制、並びに設備の範囲内で生産を増やそうとするはずです。この場合、「所定労働時間」が増えるとともに「設備稼働率」が上昇します。
 メーカーでは手持ちの設備を常に100%フル稼働させているわけではありません。生産目標に照らして、稼働率をこまめに調整します。
 設備の何%を実際に稼働させているかを示すデータが「設備稼働率」です。これは景気の浮沈に対して敏感に変動することで知られています。経済産業省が月次で発表しています。

●鉱工業指数(鉱工業生産指数)
 企業活動のレベルを図る最も古典的なデータがこれです。つまり、メーカーの生産、出荷、在庫がどのように推移しているかを示します。経済産業省が生産動態統計調査などをもとにして鉱業、製造工業の生産、出荷、在庫状況を示すデータとして作成されています。
 このうちもっとも重要視されているのが「生産指数」です。「生産」ということで分かる通り、まさしくGDP(国内総生産)を生産面から支えている企業活動のレベルを示すわけです。わが国の製造業が産業全体に占める割合は25%程度まで減少してきているものの、製品の輸出動向がGDPを大きく左右する体質は変わっていません。このため、現在でも景気動向をみるうえでは重要なデータとして各方面から注目されています。またGDPの増減率よりも大きな変化率を示す一方、データは翌月下旬に発表されるなど速報性に富むことも注目度が高い理由です。
 次に「出荷指数」とは、文字通り取引相手に出荷した数量、金額を示すデータです。「どれくらい需要があってどの程度売れたか」を示すものです。
 さらに、「在庫指数」は生産と出荷の間のタイムラグを示すデータです。つまり、生産したもののまだ出荷段階に至っていない在庫品がどれだけあるかを示します。
 企業が買い手の需要に滞りなく応えるためには、在庫はなくてはなりません。にわかに出荷額(需要)が増えたといっても、すぐに増産だけで対処できないからです。このため、企業は常に適正在庫を見積もったうえで、一定の在庫を持ちます(ここでいう在庫統計は製品在庫のみで、原料などの在庫は含まない)。
 以上の生産、出荷、在庫の間にはとても密接な関係があります。一般には景気上昇期には先行きの需要増加をにらんで生産額を増やすため「生産」>「出荷」となり、「在庫」は増えます(在庫積増し)。逆に景気が下降期には生産を減らすために「在庫」は減り、「生産」<「出荷」となります(在庫調整)。つまり「在庫」は「生産」と「出荷」の調整弁の役割を果たしているのです。


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2013年4月20日号

以上