日本経済を読み解く おさらい!経済統計データの基本

第2回 消費者物価上昇率・企業物価指数

2014年5月30日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年3月20日号

多くの経済活動を定量的に示す統計データの読み方の基本を、時事的な話題とともに解説します。(全8回)

「2%の物価上昇率を目途(Target)に」。いわずと知れたアベノミクスが掲げる3本の矢の1つです。デフレ経済から脱却するため、消費者物価上昇率を近い将来に2%に引き上げることを金融政策の最大の柱にしよう、というのです。おそらく今年から来年にかけてもっとも注目される経済データがこの物価上昇率です。今回は物価上昇率の基本を説明します。


●消費者物価上昇率
 インフレ率といった場合、この消費者物価上昇率を指すのが一般的です。これは私たちが日常生活を営むために購入している財(商品)やサービス全体の平均的な価格水準を指数として表し、その指数がどの程度のピッチで変動しているかを示すものです。中でも一般に用いられるのが「全国総合指数(生鮮品を除く)の前年比」です。つまり全国ベースでの指数が1年前に比べてどれだけ変動したかを示します。生鮮品を除くのは天候に大きく左右される野菜、果物などを含めると、景気判断を行う上でバイアスがかかるからです。
 この消費者物価上昇率は、現在はほぼゼロないし若干のマイナスで推移しています。この状態が実に10年近くにわたって続いています。これがいわゆる「デフレ」です。
 物価が上がらず、むしろ下がるという状態は、消費者から見れば一見歓迎すべきと思われるかもしれませんが、原則的には物価が下がるということは「商品の売り手が価格を引き上げられない」ことを示します。つまり、それだけ買い手=需要が少なく、すなわち景気が悪いという状態であることが多いのです。
 消費者物価の内容を見ると、実に多彩な動きを示していることに注意が必要です。図でみるとおり、総合指数は横ばいからむしろ下落しているのに対して、食品、光熱・水道、交通・通信などは上昇しています。逆に、パソコン、ビデオ、テレビなどのデジタル家電を含む教養娯楽品はコンスタントに下がっています。品目によって相当その動きには差があるのです。
 全体の傾向としては、生活必需品が値上がりしている一方、娯楽・ぜいたく品は大幅に値下がりするという傾向が顕著です。このデータは総務省統計局が毎月まとめ、発表しています。


●企業物価指数
 消費者物価指数は最終消費者である家計が購入する財・サービスの価格水準を示すものですが、一方、企業間で取引される財の価格を示すのが企業物価指数です。古くは卸売物価指数と呼ばれていました。これは日本銀行が発表しています。
 企業物価指数は国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3つからなります。国内企業物価指数は国内で企業が互いに素材、部品、中間生産品などの財を取引している段階で集計された価格指数です。これに対して、輸出・輸入物価指数は海外との間で取引される貿易財の価格指数を表現しています。円ベースでの輸出入物価指数はいずれも円相場の影響を受けることになります。
 ただし、輸出物価指数が国産品の輸出競争力を表すことには注意が必要です。価格交渉力が強まればこの価格は堅調に推移します。一方、輸入物価指数を左右するのは輸入物価の過半を占める鉱物性燃料や各種鉱物、そして農産品などのいわゆる素材・原料です。前回取り上げたようにわが国の貿易収支が急速に赤字化してきている要因の1つはこの輸入物価指数の上昇によるものです。特に、昨年11月からは円安が進行しているため、円建て基準でみた輸入物価指数が急速に上昇してきています。
 原則として、まずこの企業物価指数が動き、それから一定のタイムラグを置いて消費者物価指数が動くというのが基本です。ただし、企業物価指数が上がった場合でも、その価格上昇を小売価格の引き上げに転嫁できない場合には、企業物価指数の動きが消費者物価指数に波及しない場合も往々にしてあります。

(株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一)


執筆者
株式会社金融データシステム 代表取締役 角川 総一

掲載:東商新聞 2013年3月20日号

以上