暮らしのデザインを考える

第6回 夢の続きは“エコデザイン” ~優しい心、未来の子供たちへの贈り物~

2014年5月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年3月20日号

デザインは、“美しく魅力的なモノづくりやコトづくりを通じて快適な暮らし”を考えること…。デザインが一般的な認識よりもずっと統合的な領域だということについて紹介していきます。(全6回)

 暮らし方を変えれば電力消費量は抑えられる…ということを、私たちは3.11の大震災後の節電対策としてすでに経験している。例えば、空調システムの温度設定を夏は高めに、冬は低めに設定し、いずれも消費電力の増加を”我慢“の構図で抑制し乗り越えることができた。必ずしも巨大発電所に頼らず暮らせるということの証明である。
 しかし、大切なことはなぜ大量の電気を使わなければ暮らせないのか、原点に返り考えることではないだろうか。先の”我慢“の節電対策だけではいつまでも長続きしないことは明らかだ。再生可能な自然のクリーンエネルギーの有効活用も大切だが、電気だけに頼らない生活の方が快適で、むしろ楽しくなるような暮らし方こそ、持続可能な社会を創るためには必要だと捉える方が自然ではないだろうか。“環境に配慮された暮らし方の提案”それが“エコデザイン”のアプローチである。
 日本の高温多湿な気候は、必然のように住居のカタチを決めてきた。自然な空調システムは、外気を高床式の縁の下から床板、畳床へと導き、畳表の目を貫通して室内に入る。人が生活することで暖められた空気は、さらに天井から屋根裏へ導かれ屋根妻面等から排気される構造となっている。梅雨時の湿気を含んだ空気は、木造の構造体自身はもとより、漆喰の壁、襖、障子などの自然素材が吸収し結露などを防いでいる。逆に冬の乾燥時期にはそれらの湿気を放出するなど建物全体で呼吸し、快適な住環境を維持し続けるしくみとなっている。打ち水、風鈴などとともに古来からの智慧に学ぶ暮らし方のヒントは意外に多い。
 最近の話題から、エコデザインを観察してみると、LEDへの転換で省エネを謳う照明の他、フィルムを無くしたデジタルカメラ、レコード盤からテープやCDへと進化し、その媒体さえもなくした音源再生用の製品が挙げられる。サービス性能は飛躍的に向上させながら、超小型軽量化を実現し資源の有効活用の面からも秀逸といえる。この媒体の廃止は、製造工程から倉庫や物流のトラック便、販売に関わる土地、建物、人員、設備など維持管理の全てが不要となる。そして寿命により廃棄・回収・再生されるまでの”ライフサイクル“全体での評価が欠かせない。
 勿論、インターネットを背景にしたシステム開発やアプリ等のソフト開発に関わるエネルギーなど、環境負荷への考察は必要だが、システム全体を極端に減量することの意味は大きい。
 70年代初頭、ローマクラブの報告書は、資源枯渇問題などの警鐘を鳴らした。当時の日本では、まだ分別ゴミの回収からレジ袋の問題など、今日のように子供たちにまで理解されて日常生活に組み込まれるには、それから約30余年の時間が掛かっている。また省エネ型の性能向上は、出荷数量の増大に比例したCO2(二酸化炭素)排出量の増加傾向など矛盾も起きている。百年後の未来、快適で心豊かに過ごせる日々は訪れるのか。今日の私たち自身が真剣に議論をしなければならない。
 持続可能な暮らしのための“エコデザイン”には、無理のない緩やかな進化を期待しつつ、常に優しい心と行動で臨むことが必要だ。未来への夢実現は、何よりも次世代の子供たちのためなのだから…。

(産業技術大学院大学教授 福田 哲夫)


執筆者
福田哲夫(ふくだてつお)1949年生。日産自動車を経てフリーランスデザイナーとして活動。トランスポーテーションを中心に産業用機器から生活用品まで幅広く開発をサポート。2005年より公立大学法人首都大学東京教授、2008年より同法人産業技術大学院大学教授・創造技術専攻長。新幹線車両等を中心に受賞多数。

掲載:東商新聞 2013年3月20日号

以上