暮らしのデザインを考える

第1回 『デザインって何…?』“モノ”のカタチから“コト”のシステムまで

平成26年4月30日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年12月20日号

デザインは、“美しく魅力的なモノづくりやコトづくりを通じて快適な暮らし”を考えること…。デザインが一般的な認識よりもずっと統合的な領域だということについて紹介していきます。(全6回)

デザイン家電、デザイナーズマンション、デザイナーズブランドの商品など“いいデザインだネ!”などという時は、形態・色彩・素材などの目に見える視覚的評価がそのほとんどである。それらを抜きにしてデザインは語れないが、それだけでもまた語れない。

 “デザインって何のこと?”…この言葉から皆様は何を連想されるだろうか。

 筆者はこれまで様々な機会に講師等をお引き受けしデザインの魅力を語ってきたが、またそれらを伝えることの難しさも感じている。このデザインって何…との問いかけに対し会場からの回答は、年齢や性別を問わず、一過性の流行現象と考えている方が多いようだ。またモノの開発プロセスにおけるデザインの役割は、表層的で最後のお化粧のように捉えられていたり、その際の評価基準は一様に形態や色彩と素材などがほとんどである。
 しかし実際の開発プロセスにおけるデザインの役割は、企画から製造、流通、販売、また使用後の回収から再生までとモノのライフサイクルすべてに関わり、またその領域も物理的なしつらいなどから、日常の喜怒哀楽など心理的な情動を扱う感性領域にまで幅広く関わっている。
 流行の図柄や文様を含む洋服生地からスタイルまでのいわゆるファッション衣料の領域、自動車や携帯電話を含む家電製品などの流行をとりいれた製品はすぐに思いつくが、その他のイメージは意外に湧いてこないようだ。話題のスカイツリー関連の土産品が取りあげられたことはあったものの、毎日眼に触れているはずの量販店やマンションのチラシから化粧品等のポスター、お菓子のパッケージ、新聞、雑誌の編集あるいはテレビCM、Web等の広告宣伝までデザインされていることに気が付いているようでも回答はほとんどない。あまりにも生活の中にとけ込んでいるアイテムとしての証かもしれない。カーテン生地やカーペットの柄等はまだ解りやすいが、壁材の柄から凹凸のパターン、金属の光沢など表面処理に至るテクスチュアの細部までデザイナーが関わっている。さらには、個人用住宅からオフィスや商業施設の照明、大空間施設やスタジオにおける音響、都市の風景から自然環境まで、その範囲は留まることを知らない。そしてファストフードからコンビニエンスストア、あるいは宅急便などICTを用いた最先端システムとしてのビジネスモデルは、B to BやB to Cといわず世界中の情報を取り込みながら感性価値をまとい進化を続けていることは既にご存知の通りである。
 ここまで書けばすでにお分かりのように、デザインは、眼に見える物理的で視覚的な価値だけではなく、眼に見えないあるいは見えにくい人の情動に働きかける心理的な感性価値へと変化し、その領域を拡大し続けている。
 デザインは、”美しく魅力的なモノづくりやコトづくりを通じて快適な暮らし“を考えること…一般的な認識よりもずっと統合的な領域であることをお伝えしたい。
 ところで、誰しも美しいモノやコトに出逢った時には、心暖まり、大切にしたいと想う気持ちが湧いてくるであろう。このエレガントで魅力的なモノやコトは、ある性能を引き出し、問題解決へと導くことができる可能性を秘めている。そして各種ブランドのメッセージを表現するツールにも成り得ているのもご存知の通りである。
 デザインによる問題解決法や成功体験は、多くの出版物もあるので時代感覚を知る意味でも読まれることをお勧めする。但し、経営のリソースが同じ企業など何処にもない。デザインの見方と考え方を理解するには一人称での観察が必須であり、目利きとしての資質が必要だ。
 そこで最後にひとつ『タマゴを描く』という宿題で皆さんに描いてみていただきたい。スケッチを描くことに他の条件は何もない。解説は次回に乞うご期待、というところで…。

(産業技術大学院大学教授 福田哲夫)


執筆者
福田哲夫(ふくだてつお)1949年生。日産自動車を経てフリーランスデザイナーとして活動。トランスポーテーションを中心に産業用機器から生活用品まで幅広く開発をサポート。2005年より公立大学法人首都大学東京教授、2008年より同法人産業技術大学院大学教授・創造技術専攻長。新幹線車両等を中心に受賞多数。

掲載:東商新聞 2012年12月20日号

以上