中小企業事業引継のポイント

第5回 成功するM&Aのために

2013年9月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年12月10日号

深刻化する中小企業の事業後継者問題。事業継承の対策についてアドバイスします。(全5回)

1.譲渡・譲受のご相談
 後継者不在のため譲渡を希望しているという相談がある一方、そういった会社(事業)があれば譲り受けたいという相談も当センターには数多く寄せられています。昨年10月のセンター開設以降、約230社のご相談をお受けしていますが、譲渡ニーズと譲受ニーズの比率はおおよそ半々となっています。
 小規模・零細企業で株価(譲渡価格)も低く、民間仲介機関のビジネスベースにのらないような案件についても、寄せられた譲受ニーズの中から情報をマッチングさせ、当センターで直接支援しているケースもあります。現在もいくつかの案件を推進していますが、様々な譲受ニーズが集積するにつれ、将来的には当センター内でマッチングする案件も増えていくと考えています。また、ご相談者が希望されれば、当センターに登録している実績のある民間仲介機関をご紹介しています。


2.理想的な買い手とは
 会社(事業)を譲り受けたいと当センターを訪れる方は、事業拡大の意欲を持つ未上場の中堅中小企業の経営者、上場企業の担当者まで幅広く内容も様々ですが、理想的な買い手としては、①目的が明確であること②事業に相乗効果があること③資金余力が十分であること④過去にM&Aを行った経験があることなどの要件を備えていることだと言えます。
 M&Aが失敗すると、残った従業員も譲り受けた方不幸になってしまいます。そうなる可能性の高いM&Aであればやらないほうが良いのです。また、M&Aを個人の独立開業の手段として活用したいという方も稀にいますが、会社経営の経験も業界知識もない個人が、数人でも社員のいる会社を譲り受けるのは難しいと考えたほうが良いでしょう。
 独立開業に際し、飲食業や小売業といったいわゆる店舗を居抜きで譲り受けるというようなケースではM&Aは非常に有効ですが、会社を引き継ぐ場合には、十分な引き継ぎ期間、ノウハウの習得期間がある場合を除いては避けたほうがベターです。


3.成功するM&Aのために
 譲渡する側の経営者、またM&Aを支援する専門家にも良く考えてほしいことがあります。M&Aの成約=成功ではありません。売りました、買いましたで終わりではないのです。会社が上手く引き継がれ、新たな形で成長していくこと。最低でも雇用が維持され会社が存続していくことができて、初めて成功といえます。結局のところ事業が上手く引き継がれなければ、そのM&Aにはほとんど意味がなかったことになります。
 特に事業承継に関わるM&Aの目的は、いかに好条件で売却するかという点よりも、いかにして上手に会社(事業)を活かしてくれる相手に託し、会社(事業)を次世代に継いでもらうかという点に力点が置かれるのが望ましいといえます。
 売り手の社長も自身の利益やプライドよりも、残る社員の将来を優先して考え、無理のない金額で売買が成立し、会社を成長させるため、あるいは社員のモチベーションを高めるための資金が捻出しやすい状況で引継がれるのが理想的です。

 最後に、深刻化する後継者問題の解決策として、ひとつでも多く成功するM&Aが行われ、残すべき会社や事業が次世代に上手く継がれていくよう、M&Aを支援する唯一の公的機関として、中小企業の皆様のお役に立ちたいと思っています。


(東京都事業引継ぎ支援センター サブマネージャー 竹内 寛暁)


執筆者
東京都事業引継ぎ支援センター

掲載:東商新聞 2012年12月10日号

以上