企業健康診断のススメ

第5回 事業計画策定支援の事例(その2)

2013年8月16日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年6月10日号

中小企業の事業再生に向けた取り組みを具体的な事例を交えて説明します。(全6回)

 今回は、金融機関に債権放棄を求めた事例について紹介します。

1.自助努力の限界
 その会社は、財務面・事業面の実態調査で明らかになった課題の克服に向けて、営業力強化や販管費削減など、〈最大限の自助努力〉を盛り込んだ事業計画を作成しました。しかし、その計画に基づいて、将来の財務改善の度合いや借入金の返済年数をシミュレーションしたところ、債務超過解消年数が45年、借入金償還年数が50年と計算されました。業種によっても差がありますが、一般的には、債務超過解消が5年以内(長くても10年以内)、債務超過解消時以降の借入金償還年数が10年程度でなければ、事業再生が図られる計画とは言えません。

2.より踏み込んだ金融支援
 このように、最大限の自助努力だけでは債務超過解消年数、借入金返済年数が適正な年数とならない場合には、金融債務を圧縮する方法として、例えばDDS(デット・デット・スワップ)や債権放棄等のより踏み込んだ金融支援を求めることが考えられます。

3.債権放棄
 今回の場合、財務の毀損が大きかったため、全取引金融機関5行に対して、債権放棄を求めることとなりました。
 債権放棄は、借入金の一部切り捨てを求めるものです。その具体的な手法には、大きく分けて2つの方法があります。まず1つは、直接債権放棄を受ける場合です。これは、借入金の一部を、金融機関に直接カットしてもらう方法です。そして、もう1つの方法は、税務的・法的な観点から、別会社を設立し、収益事業で返済可能な借入金をそこへ切り出し、旧会社を特別清算等するという手法です。これにより、旧会社に残した借入金の一部を実質的に放棄してもらうことになります。いわゆる第二会社方式と呼ばれる再生手法です。

4.今回のケースでは
 債務超過解消の目安を5年とし、第二会社方式による実質的な債権放棄を求めました。借入金の一部を放棄して欲しいとのお願いですから、すべての金融機関から同意を得るためには、いくつもの高いハードルをクリアしていく必要があります。まずは、金融機関にとっても債権放棄することの意義が見出せなければなりません。つまり、倒産した場合よりも明らかに経済合理性を有すること(銀行にとって回収金額が多くなること)が必要です。また、同社を再生させることに社会的意義が認められること(取引関係・雇用問題)等も論点となります。もし条件が揃わなければ、「倒産してもらった方がいい」との結論にもなりかねません。

5.責任の明確化
 さらには、当然のことながら、各関係者の責任を明確にする必要もあります。一般的には、①株主は出資金全額が損失となり残余財産の配当はないこと、②原因を招いた経営者は退任すること、③保証人はすべての個人財産を提供すること、等が原則となります。
 但し、例外となるケースもあり、本件では、現経営者による事業継続がベストであるとの判断から、退任することなく(連帯保証人の責任は果たした上で)、引き続き新会社での経営を行うこととなりました。
 そして、同社の場合、金融支援案を提示後、各行が行内で何度も審議を重ね、紆余曲折を経た結果、最終的には提案から約半年後に、全5行の合意を得ることができました。

(東京都中小企業再生支援協議会 マネージャー・公認会計士 相澤 啓太 3283-7425)


執筆者
東京都中小企業再生支援協議会

掲載:東商新聞 2012年6月10日号

以上