企業健康診断のススメ

第4回 事業計画策定支援の事例(その1)

2013年8月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年5月10日号

中小企業の事業再生に向けた取り組みを具体的な事例を交えて説明します。(全6回)

 前回までは、実際の窓口相談から、中小企業の相談事例をいくつか紹介しました。今回は、再生支援協議会のもう一つの役割である事業計画策定支援の進め方と金融機関調整について、事例に基づいて説明していきます。

1.相談に来られた経緯
 その会社は自動車部品の製造業で、昨年の大震災による需要減少で借入金返済に窮し、金融機関全6行の元金返済を停止しました。その後、一部の銀行から事業計画の提出と早期返済再開を求められ、今後の対応について相談するため、当協議会の窓口相談を訪れました。

2.事業計画策定支援に当たって
 当協議会が事業計画策定支援を行うに当たっては、①会社の事業改善意思・意欲があるか、②事業性があるか(例え現状は赤字でも将来的に営業利益・キャッシュフローが生み出せるか)、③苦境に陥った原因を取り除けるか、④主要金融機関に支援姿勢があるか、といった点について検討します。
 同社の場合、上記①~④を満たすため、事業計画策定支援のプロジェクト開始を決定しました。

3.実態調査で明らかになった問題点
 まず、金融機関6行の担当者を集め、プロジェクトのキックオフ会議を行った後、当協議会の専門家アドバイザーにより、同社の実態調査に入りました。これは、事業計画の土台を固めるために、1ヶ月程度かけて、財務・事業面の実態を調査するもので、これにより様々な問題点が明らかになります。同社の場合も新たな課題が多数発見されました。
 財務面では、相当な製品在庫の不動化・不良化が発見されました。また、原価計算は標準原価計算との説明でしたが、標準単価は10年以上前の単価で実態と懸け離れており、期末に多額の原価差異が発生する状況でした。
 事業面では、納品先に対して同社の製造原価を正確に示せない状況だったため、実際は赤字で納品している可能性の高い製品が発見されたこと、原材料の仕入先が長年固定化しており、仕入価格低減の余地があることなどが判明しました。

4.事業計画策定のポイント
 さて、次にこれらの実態調査で明らかになった問題点を解消しながら、事業計画を策定する段階に移ります。計画のポイントは、同社として最大限の自助努力を示し、収入の最大化と支出の最小化を図る計画になっているかということでした。
 同社は、当協議会のアドバイスを参考に、計画の骨子として、次のような改善策を示しました。①製品在庫の滞留年数管理を徹底し不良在庫を生じさせない、②標準原価と実際原価を比較する新原価計算を導入する、③新原価計算に基づき、納品価格との間に発生している赤字を解消する、④仕入価格の交渉により原材料の値下げを図る。
 そして、これらの改善策を、誰が・いつ・どうやって実行していくか、具体的に計画に落とし込んでいきました。

5.金融機関調整と最終同意
 金融機関6行に対しては、こうした改善策を盛り込んだ事業計画を示した上で、収支改善後のキャッシュフローに基づくリスケジュールによる返済計画を金融支援として提案しました。
 各行とも、この計画について行内で審議を重ねた結果、計画の達成状況を毎月報告することなど、いくつか追加注文もつきましたが、最終的には、提案から約3週間後に全6行の合意を得ることができました。

(東京都中小企業再生支援協議会 マネージャー・公認会計士 相澤 啓太 3283-7425)


執筆者
東京都中小企業再生支援協議会

掲載:東商新聞 2012年5月10日号

以上