企業健康診断のススメ

第3回 中小企業からの相談事例(その2)

2013年8月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年4月10日号

中小企業の事業再生に向けた取り組みを具体的な事例を交えて説明します。(全6回)

前回は、もっとも多い相談事例として「資金繰り」に関する相談を取り上げました。今回は、「為替デリバティブ」、「粉飾決算」、「事業承継」に関する相談を紹介いたします。ただし、各企業によって、相談に至る背景や状況はそれぞれ異なりますので、あくまでも参考例としてお読みください。また、同じような問題でお悩みの方は、気軽にご連絡ください。

1.為替デリバティブ
 長引く円高の影響で、為替デリバティブに伴う損失についての相談が急増しています。
 ある会社は、取引銀行との間に、一定の為替レートで米ドルを毎月購入する5年契約を締結しており、円高進行に伴ってこの契約による資金流出が続き、資金不足に陥りました。もし、この契約を履行できなくなった場合、銀行とのすべての取引に影響が及び、例えば手形割引も止められてしまうのではないか、という不安を持っていました。
 相談では、直近の資金繰り状況を確認した上で、取引銀行に相談してみることを勧めました。為替デリバティブは、銀行側も問題意識を持って対応している事案であり、銀行によっては専用窓口を開設して相談に応じています。為替デリバティブだけの問題解決を図る場合には、金融ADR(裁判外紛争解決手続)という制度があることも説明しました。

2.粉飾決算
 中小企業の会計処理では、得意先との取引関係を維持するため、または取引銀行の与信を維持するためなど、様々な理由によって「不適切な経理処理」、いわゆる「粉飾決算」をしている場合も見受けられます。
 ある会社は、過去の粉飾決算による不良在庫の影響で資金繰りが厳しくなり、条件どおりの借入金返済が困難になりました。粉飾のことは銀行には一切説明しておらず、資金繰りが厳しい現状も、いまさら銀行には言い出しにくい状況でした。
 しかし、銀行に元金返済猶予等の支援を求める場合、粉飾の事実を隠したまま協力を仰ぐことは困難です。とても勇気がいることですが、なぜ粉飾決算を行うに至ったのか、今後この粉飾の影響をどのように処理していくつもりなのか等、一切を真摯に説明して理解してもらうしかないとアドバイスしました。銀行にいずれ事実が判明した場合の影響を考えると、まだ支援に応じてもらえそうな今の段階で、すべてを説明しておくべきだと思われるからです。

3.事業承継
 中小企業では、経営者の高齢化が進む一方で、事業承継は満足に進んでいないという現状があります。
 その会社の創業者は80歳を迎え、経営に意欲を見せ始めた息子に、そろそろ会社を承継したいと考えていました。
 事業を次世代に引き継いでも問題ない財務体質・経営体制かどうか、専門家から客観的なアドバイスをもらいたいとの要望でした。同社の場合、財務面では過剰な借入金があり、管理面では取引先別の採算管理ができていないことが問題点として認識されました。そこで、一部の借入金は余剰資産の売却による早期弁済で金利負担を減らすことを勧め、採算管理については現在の管理システムでも対応可能な仕組み作りをアドバイスしました。客観的な診断を受けたことで、自社の課題が整理され、とるべき対策が明快になったと喜んでいただけました。

 次回は、再生支援協議会のもう一つの役割である計画策定支援について説明します。

(東京都中小企業再生支援協議会 マネージャー・公認会計士 相澤 啓太 3283-7425)


執筆者
東京都中小企業再生支援協議会

掲載:東商新聞 2012年4月10日号

以上