事業承継相談室 

第3回 代表者に復帰すべきか

2013年7月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年3月20日号

事業継承に関するさまざまな問題について、東商荒川支部の事業継承研究委員会の相談員がアドバイスします。(全6回)

◆相談内容◆
40年前に創業した印刷製本業を3年前、37歳の息子に引き継ぎました。ただ、得意先の離散などで、売上高が毎年1割ずつ落ちる厳しい状態です。息子と従業員との間には亀裂が入り、古くから当社に勤めている社員は、最近、私の復帰を持ちかけます。この状況をどのように打開するべきかご意見をください。


◆相談員の意見◆
<相談員A>代表権のある役職に復帰することにはリスクも伴います。息子さんの経営手腕があやしいと宣言したこととなり、取引先などの利害関係者に警戒感を与えるからです。慎重に考えるべきです。

<相談員B>お父さんが、代表権のない顧問や相談役などの役職に就いてみるのはどうでしょう。経営判断は、あくまで息子さん本人が責任を持ち、お父さんはアドバイザー役に徹する。”役割の仕分け“をするのもひとつです。

<相談員A>大企業と異なり、後継者候補が何人もいるわけではありません。いったんご子息に経営を預けたからには、取れる手段をやり尽くしてからにしないと、息子さん自身のやる気をそぐことになるのではないでしょうか。

<相談員B>問題の所在は息子さんだけにあるのでしょうか。印刷製本業の現状はとても厳しく、2割、3割の売上減に歯を食いしばりながら経営に当たられている事業者は多いです。この業界の事業所減少が激しいことを考えれば、息子さんも必死に頑張っていると思います。

<相談員A>環境変化の影響が大きい場合、誰が経営者でも再建を成し遂げることは難しいでしょう。気になるのは、古くからの社員が求めているものが、過去の成功体験ではないでしょうか。過去を振り返ってばかりでは、解決できない問題かもしれません。

<相談員B>業務に精通した社員の話に耳を傾けることは大事なことです。ただ、それだけでなく、次世代を担う息子さんとのコミュニケーションを十分にとり、新たな事業展開を含む事業計画策定に取り組むことを検討してみてはいかがでしょうか。事業の魅力をどのように高めていくか、しばらく二人三脚で経営を進めるのもよいでしょう。

<相談室長>息子さんの経営能力の判断については少し時間をおいてみてはどうでしょうか。親子が今後の会社経営について納得いくまで話し合い、前向きな経営が実現するようになれば、従業員との関係もいい方向に向かう、そう期待したいと思います。

(荒川支部 事業承継研究委員会)


執筆者
東京商工会議所 荒川支部 事業承継研究委員会

掲載:東商新聞 2012年3月20日号

以上