事業承継相談室 

第5回 株式の買い取り請求への不安

2013年7月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年4月20日号

事業継承に関するさまざまな問題について、東商荒川支部の事業継承研究委員会の相談員がアドバイスします。(全6回)

◆相談内容◆
株式分散が進んでおり、その株式の買い取りを迫られることを心配しています。事業が低迷している現在、余裕資金はなく、どのような対策を取っておくべきかアドバイスをお願いします。なお、当社は昭和28年に創業した製本業で、息子が事業承継する予定です。


◆相談員の意見◆
<相談員A>相談者は親族の世代交代が進み、血縁関係が薄れる中、高い値段での買い取り請求の心配が大きいのでしょう。特に土地の評価額によって算定株価が大きく影響される場合が多く、そのことに不安を感じる方も多いようです。

<相談員B>バブル期に比べれば土地の価格は下がっていますが、昭和20年代に設立された同社の場合、実際には高い評価額となっているかもしれません。まずは相続税評価ベースで土地の価格を把握されてはいかがでしょうか。なお、株価算定には、複雑な計算が必要となり、専門家(例えば顧問税理士)に相談されるのが早道です。

<相談員A>なお、この算定価格は目安とはなりますが、最終的に取引価格は、保有株主と会社との協議(相対価格)で決まります(価格については税務上、問題が生じぬよう留意)。一定期間に協議が整わないときは、裁判所に対し、価格決定の申立て手続きをとります。

<相談員B>こうした事情もあり、株主総会を通じて事業承継を含めた今後の経営方針について理解してもらうなど、株主との良好な人間関係を築いておくことが大事です。

<相談員A>買い取り要求も、場合によってはチャンスと、とらえることもできます。安定した経営を実現するため、分散した株式を再度集中させるのも重要な経営戦略です。

<相談員B>ところで製本業界は過去、その技術の高さが評価され、製本単価も高かったと聞いています。ただ最近は、受注単価の値崩れや簡易製本機械の登場などにより、経営環境が大きく変化しており、業容転換している会社も多いと聞きます。

<相談室長>株価算定と同時に、事業の先行き、見込みも重要です。息子さんが仕方なく事業を承継することが無いよう、しっかりとお話されることをお勧めします。株主一同が集まる機会も、これを確認する意味で大事かもしれません。後継者を中心に経営陣が意思統一を図り、株主との人間関係を良好に保つ努力こそ、今もっとも求められていることではないでしょうか。

(荒川支部 事業承継研究委員会)


執筆者
東京商工会議所 荒川支部 事業承継研究委員会

掲載:東商新聞 2012年4月20日号

以上