事業承継相談室 

第1回 後継者入社の留意点

2013年6月28日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年2月10日号

事業継承に関するさまざまな問題について、東商荒川支部の事業継承研究委員会の相談員がアドバイスします。(全6回)

◆相談内容◆
自分が不得手な分野である情報化に取り組むのを機に、情報システム会社で活躍している長男(37歳)を後継者として入社させようかと考えています。注意すべき点はありますか。(皮革卸売業 57歳)

◆相談員の意見◆
<相談員A>ご長男の意思確認から始めるべきでしょう。まずは、①自社の財務状況、②業界の将来性、③自社の強み・弱み、④社内状況(従業員、雰囲気)など、ご長男が今回のお話を冷静に受け止められる材料を提示して、親子で協議することが大事です。

<相談員B>同時に後継者としての心づもりの有無なども率直にお聞きください。ご長男は、十数年のキャリアをお持ちになり、今の所属会社で活躍されているとのこと。ご本人の家族状況や今後のキャリア形成など、お父様の勝手にはならない要素が多くあります。ご長男の人生プランを大きく左右するお話ですから、このプロセスは外せません。これらから、ご長男が後継者としてやる気があるか、やる能力はあるか、判断材料が揃うことになります。これら前提条件をクリアしたうえで、ご長男が入社に納得されるならば、事業承継の第一歩が踏み出せた、といえるかもしれません。

<相談員A>今回の相談では、後継者候補に情報化という大きな社内改革を任せる立場で入社してもらうため、業務内容の把握や従業員との協業が可能となり、スムーズな事業承継の流れに乗れると期待できます。ただし、「情報化が必要だから、情報システム会社にいる長男に任せたい」というだけでは、社内の理解も得られませんし、そのプロジェクトが円滑に進むかも不安です。まずは、会社の現状と今後の課題を現社員に向けて明示し、その課題克服のために情報化が必要であることを説明することが大切です。

<相談員B>後継者の方にプロジェクトを任せた際、社員と社長(父)との板挟みになってしまい、悩まれるケースも散見されます。そうしたことがないよう、現経営者として新たなプロジェクトの必要性を、社員が理解できるよう努力をしてほしいものです。

<相談室長>事業承継をきっかけとして、事業構造を転換させるケースや、新たな市場開拓に取り掛かるケースは少なくありません。今回の相談でも、会社経営の変革が事業承継を通じて起きることを期待したいと思います。そのためにも、今回のアドバイスで提示された対策をきちんと講じていただくのがよいでしょう。

(荒川支部 事業承継研究委員会)


執筆者
東京商工会議所 荒川支部 事業承継研究委員会

掲載:東商新聞 2012年2月10日号

以上