ソーシャル時代を生きる

第5回 ソーシャルメディアは生活者・社員・経営者を結ぶ情報パイプライン

2013年4月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年7月10日号

ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹氏が、ソーシャルメディアによって変わる社会と、企業活動について解説します。(全6回)

 「チャイニーズ・ウォール」という言葉をご存知だろうか。証券会社の引受部門と営業部門間など、部門間に意図的に設けられた情報障壁を表す言葉である。実際の企業内には、縦割り組織の慣行や部門間の競争、過度な部分最適化、果ては部門長間のいがみ合いまで、本来あるべきでないチャイニーズ・ウォールが築かれ、オープン化を阻害する要因となっている。
 この目に見えないチャイニーズ・ウォールを取り除くには、どうすれば良いか。社内でクローズされた空間にソーシャル・ネットワークやブログ、チャットなどのソーシャル・テクノロジーを導入し、風通しを良くすることが昨今よく提唱されているが、筆者の知る限り、残念ながらその効果は限定的だ。それらの機能を利用して情報共有するインセンティブが不十分なのである。現業務との優先順位も不明確で返答義務もないため、結果として好きな人だけが使うたまり場になってしまう。先進企業では情報共有の目標、評価を人事システムに組み込み始めているが、まだ実験段階で成果には結びついていないものが多い。
 そのような社内ソーシャルの場を活性化する奥の手がある。社内でクローズされた空間に、生活者や顧客の声を取り入れることだ。たとえば、ツイッター上で自社に関して会話されている声をすべてピックアップし、社内の場に流すこと、そして彼らの声の傾聴と対策を業務の一貫と位置づけるのである。顧客の声がクローズ空間に入った途端、その場には否応なしに緊張が走ることとなる。それが共通の目的、大義名分となり、行動を促していけるはずだ。
 テクノロジーそのものが重要ではなく、顧客と社員・管理職・経営者がひとつの情報パイプラインで結ばれることこそが大切なのである。不正アクセス防止法や個人情報保護法などにより、日増しに堅牢性を求められ続けてきた情報システム部門にとって、自社には縁遠い選択肢だと感じている方も多いだろう。しかし現実には、ソーシャルメディアの企業活用は着実に浸透している。クローズからオープンへ。情報化の風向きは明らかに変わり始めている。もちろん、企業内の情報をすべてオープンにできないのは当然だ。重大な経営戦略、製品・サービスのロードマップ、顧客データベースなど、本質的に企業が公開できない情報も存在する。オープン・リーダーシップとて例外ではない。したがって、何をオープンにして、何をクローズにするのか、企業としてのポリシーが問われることとなる。リスクの理解がオープン・リーダーシップの鍵となるだろう。


著者略歴
斉藤 徹(さいとう とおる) 株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

掲載:東商新聞 2012年7月10日号

以上